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2006年02月25日

別所梅之助

「石を積む」
大きい石の上に石を積むのみか、洞穴などの廻りにも積む。現に蘇峰先生の名となつた阿蘇の火口のほとりに、参詣者たちは岩やら石やらを積み重ねる。これが讚岐に残つてゐる古墳、積石塚などとどういふ関係があるか、私は知らぬ。なにせよ小石をつむやうな所は、里遠からぬ地では、坂路などに多い。従つて之を賽の神に縁ありとする柳田国男氏の説もうなづける。「丘山は卑きを積んで高きをなす」(荘子)だの、「泰山は土石を辞せず、故によくその高きをなす」(管子)だのいふおもひの背景は、何であつたらう。それはすぐ断定もしがたいけれど、山や丘は、その低くなるのを忌む。それで富士などのやうに、山から落ちる砂が夜の間に山にのぼりゆくといふ想もあつたり、石巻山などのやうに、参詣の者は小石を山上に運ぶといふならはしもある。