西東三鬼
梅雨富士の黒い三角兄死ぬか
ばら色のままに富士凍て草城忌
大寒の富士へ向つて舟押し出す
新年を見る薔薇色の富士にのみ
富士高く海低し秋の蝿一匹
素手で掻く岩海苔富士と共に白髪
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梅雨富士の黒い三角兄死ぬか
ばら色のままに富士凍て草城忌
大寒の富士へ向つて舟押し出す
新年を見る薔薇色の富士にのみ
富士高く海低し秋の蝿一匹
素手で掻く岩海苔富士と共に白髪
青富士の裾のキャンプにめざめたる
初旅の富士の白無垢たぐひなし
寒晒富嶽大きく裏に聳つ
林檎咲く月夜を占めて津軽富士
富士ぞ雪盛り切飯に立つ煙
「次郎物語」(第五部)
第三日目は人間的交渉をさけて、ひたすら自然に親しもうという計画だった。未明に鉄舟寺を辞すると、まず竜華寺(りゅうげじ)の日の出の富士を仰ぎ、三保の松原で海気を吸い、清水駅から汽車で御殿場(ごてんば)に出て、富士の裾野を山中湖畔までバスを走らせた。
次郎はほうっと深い息をした。それは安堵の吐息ともつかず、これまで以上の深い苦悶の吐息ともつかないものだった。
二人はやがて立ちあがって、言い合わしたように富士を仰いだ。どちらからも口をきかなかった。富士は、三保で見たすらりとした姿とはまるでちがった、重々しい沈黙と孤独の姿を、青空の下に横たえていた。
富士よりの風にも慣れし秋の蝶
壷焼きや手のひらにのる遠き富士
広重の富士は三角鎌鼬
富士垢雛や富士百景の第一図
朝日山梨:2006年05月26日
・ 最近は5合目以上も半分ほどの山肌が見えていた。
・ 24日の夕から夜にかけて降った雪で5合目付近から山頂にかけて真っ白に。
・ 富士吉田市富士山課「真冬に近い姿。この時期では極めて珍しい」。
読売山梨:26日
・ 8合目付近に20日以降見えていた雪形「農鳥」。
・ 25日、雪に埋もれて姿を消した。
・ 5月の連休前後に雪が降って隠れることはまれにある。
・ 富士山課「この時期に一度現れた農鳥が姿を消すのは珍しい」。
・ 同課によると、12月中旬程度の状態。
・ 例年、農鳥は4月中旬から5月中旬。5月末には姿を消す。
・ 北麓では、冬に農鳥が現れた年は凶作になるとされている。
・ 地元住民は「冬に一度出て、この時期にまた隠れて、今年はどうなるのか……」。
初冨士につづく山々遠く近く
初秋の大きな富士に対しけり
富士を背に富士を真向きに茶を摘めり
雪晴の富士など見つゝ来られしや
迷ひ蟻富士夕映に包まるる
金風や蝦夷富士雲を遠ざけて
夕富士に力抜きたる土用波
雪解富士清水港も昏れてきし
汀歩す待春の富士輝いて
初富士の小さくなつて昏れにけり
くつきりと子規忌の富士でありにけり
赤富士や湖の底より日は昇る
夏富士の裾に勾玉ほどの海
※「海」は「湖」?
赤冨士としてきはまる慈悲心鳥
郭公や吾妻小富士のはゝに似る
八月の富士のくろがね敗戦日
ことごとく枯れ恭順の富士薊