« 2006年05月21日 - 2006年05月27日 | メインページへ | 2006年06月04日 - 2006年06月10日 »

2006年06月03日

西東三鬼

梅雨富士の黒い三角兄死ぬか

ばら色のままに富士凍て草城忌

大寒の富士へ向つて舟押し出す

新年を見る薔薇色の富士にのみ

富士高く海低し秋の蝿一匹

素手で掻く岩海苔富士と共に白髪

西島麦南

青富士の裾のキャンプにめざめたる

2006年06月02日

西田浩洋

初旅の富士の白無垢たぐひなし

西村公鳳

寒晒富嶽大きく裏に聳つ

2006年06月01日

西村梛子

林檎咲く月夜を占めて津軽富士

西勝

富士ぞ雪盛り切飯に立つ煙

2006年05月30日

下村湖人

「次郎物語」(第五部)
第三日目は人間的交渉をさけて、ひたすら自然に親しもうという計画だった。未明に鉄舟寺を辞すると、まず竜華寺(りゅうげじ)の日の出の富士を仰ぎ、三保の松原で海気を吸い、清水駅から汽車で御殿場(ごてんば)に出て、富士の裾野を山中湖畔までバスを走らせた。

次郎はほうっと深い息をした。それは安堵の吐息ともつかず、これまで以上の深い苦悶の吐息ともつかないものだった。
二人はやがて立ちあがって、言い合わしたように富士を仰いだ。どちらからも口をきかなかった。富士は、三保で見たすらりとした姿とはまるでちがった、重々しい沈黙と孤独の姿を、青空の下に横たえていた。

星野高士

富士よりの風にも慣れし秋の蝶

成瀬櫻桃子(成瀬桜桃子)

壷焼きや手のひらにのる遠き富士

広重の富士は三角鎌鼬

2006年05月29日

菅原師竹

富士垢雛富士百景の第一図

富士が雪化粧

朝日山梨:2006年05月26日
 ・ 最近は5合目以上も半分ほどの山肌が見えていた。
 ・ 24日の夕から夜にかけて降った雪で5合目付近から山頂にかけて真っ白に。
 ・ 富士吉田市富士山課「真冬に近い姿。この時期では極めて珍しい」。

読売山梨:26日
 ・ 8合目付近に20日以降見えていた雪形「農鳥」。
 ・ 25日、雪に埋もれて姿を消した。
 ・ 5月の連休前後に雪が降って隠れることはまれにある。
 ・ 富士山課「この時期に一度現れた農鳥が姿を消すのは珍しい」。
 ・ 同課によると、12月中旬程度の状態。
 ・ 例年、農鳥は4月中旬から5月中旬。5月末には姿を消す。
 ・ 北麓では、冬に農鳥が現れた年は凶作になるとされている。
 ・ 地元住民は「冬に一度出て、この時期にまた隠れて、今年はどうなるのか……」。

2006年05月28日

星野立子

初冨士につづく山々遠く近く

初秋の大きな富士に対しけり

富士を背に富士を真向きに茶を摘めり

雪晴の富士など見つゝ来られしや

星野椿

迷ひ蟻富士夕映に包まるる

金風や蝦夷富士雲を遠ざけて

夕富士に力抜きたる土用波

雪解富士清水港も昏れてきし

汀歩す待春の富士輝いて

初富士の小さくなつて昏れにけり

くつきりと子規忌の富士でありにけり

赤富士や湖の底より日は昇る

星野椿について

杉良介

夏富士の裾に勾玉ほどの海

※「海」は「湖」?

杉山岳陽

赤冨士としてきはまる慈悲心鳥

郭公や吾妻小富士のはゝに似る

水原春郎

八月の富士のくろがね敗戦日

ことごとく枯れ恭順の富士薊