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2007年08月25日

九条武子

「夕波」より
汐けむりもやごもる磯に夕富士は紺の色してたかくしありけり


「伏見丸にて」より
伊豆も遠江(とほたふみ)もまた富士も、雲多くして見えずときゝながら、船すこし動くに部屋にのみこもる。


「北海道の旅」より
蝦夷富士といはれてゐる羊蹄山(しりべしさん)が、をぐらくなつて行く空に、けれどもはつきりと重々しい姿して、大地のおごそかな威力をもつて座してゐるのが近くに見えて、六時頃倶知安駅(くちあんえき)に着いた。駅員のなまりの多い呼び声に、旅の人らはドツとみな笑つた。

2007年08月20日

住吉胡之吉

正直に自分の日本に対する気持。日本は好きだ、愛する。だが日本の国体云々以上に日本人は大きく人間の運命を考へなければならないのではなからうか。美しくも清き富士、郷土愛、民族愛、が祖国愛たることならば、人後に落ちない。だがたゞ過去の歴史、国体のために戦ふのはどうしても割り切れぬ。人間の悲惨事は天皇では救へぬ。日本人一人々々がもつと立派にならなくては。

※「はるかなる山河に−東大戦没学生の手記」より