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2006年07月29日

渡会昌広

暖房車富士を見しあと子は眠り

田中政子

海雲糶る嗄声に富士晴れゆけり

2006年07月28日

田川飛旅子

初富士へ化粧が濃いとひとり言

博多人形の函を機上に富士初雪

殿村菟絲子

子が子負ふねんねこ富士は風の神

九年母や大家族制に富士立てり

五月富士四方より雲の来て留る

2006年07月27日

天野武子

蝌蚪生るる田の半分に逆さ富士

田村了咲

馬市や町に峙つ南部富士

2006年07月26日

天野蘇鉄

大鳥居はみ出してゐる夏の富士

辻田克己

富士を見しこと初旅の余恵とす

2006年07月25日

椎本才麿

炉開きの里初富士おもふあしたかな

富士ぞ雪魯盤か掛けし日本橋

五月雨や富士の高根のもえて居る

鳥居美智子

青野より富士に近づく一歩かな

客山は富士と秋草丈競ふ

2006年07月24日

長田白日夢

鉞の一撃富士の山開き

長谷川秋子

芒野の宙や今日のみ女富士

富士仰ぎつづけ主張となる芒

露けしや朝富士の眉刎ねあがり

夏富士の旅思ひ立つ何を捨てに

浦和より見る富士愛し初手水

2006年07月23日

長谷川史郊

雲払ふ不二へ穂絮のかぎりなし

諏訪秋山

「友の訪ひし時詠みける(雑録)」から「和倉温泉に浴して」より
薬師の岳(やま)の峰高く
紫嵐(あらし)に袖をはらはんも
こゝろもとなく弁天の
巌のかげにをりたては
しらべしづけき磯馴松
下枝にかすむ能登富士
闇の几帳の裾なかく
瀬嵐の森のつぎ/\に
いつしか眠る浜千鳥

※早稲田文学、明治31年(1898)に収録。