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2006年04月08日

大津恵子

鶏鳴や雪富士にいま茜さす

大谷碧雲居

初富士の夕映もなく暮れにけり

大森井晒女

裏富士に走る雪痕朴咲けり

※この方の情報を教えてください!

沢田弦四朗

富士晴れて橋に籾干す忍野村

青栗や曇れどさやに信濃富士

大島蓼太

不二晴れて更に山なきあした哉

此神の玉に霽たり霧の不二

五月雨夢にも不二は見えぬ也

2006年04月07日

黛まどか

富士山を入れて撮れよとサングラス

村井隆

青富士に雨雲ひくくしてはやき

秋富士のあかつきは色幾変化

大場美夜子

秋嶺として遠富士のあきらかに

なめらかな海に裳を引く春の富士

倉田晴生

青富士や渺々風の夏雲雀

蘇谷やすお

九合目はまこと胸突富士詣

前田六霞

夕立去る富士の笠曇おきざりに

村田青麦

満目の雪の極みに雪の富士

村田とう女

真夜の富士春星あまたちりばめて

村瀬つとむ

空席を埋めし露人に寒の富士

近松門左衛門

「信州川中島合戰」
地 さあ/\敵(かたき)の根は切つたり。國境(くにざかひ)迄お供といはんも此の足元。老母も氣遣ひ。御縁もあらば又重ねて隨分御無事で。其方(そつち)も無事で。さらば。/\と一禮のべ。
コハリ 別れて歸る勘介が。仁は玄徳智は孔明勇は關羽に並びなき。譽れは三國名は高き。富士を移して諏訪の不二。

謡 戀ゆゑ旅を信濃路や。 ナホス 淺間が嶽とつらねける。山の煙も我が思ひには。 フシ 丈も及ばじ。 フシ 富士の山。雪の肌に花の顔。鹿子斑(かのこまばら)の。雲の帶。肩に。素縫(すぬい)の。金紗の フシ 千鳥。裾野の模樣望月の。駒の追風そよ/\戦(そよ)ぐ。


浄瑠璃「聖徳太子絵伝記」
日本廻りのだけ/\の。ふじもつくばもめの下に。もゆるあさまのあさまにも。たにの小川のけふりかとひらやよかはの花ぐもり。見下ろすからに一かすみ。

田山花袋

「田舎教師」
行田から羽生に通う路は、吹きさらしの平野のならい、顔も向けられないほど西風が激しく吹きすさんだ。日曜日の日の暮れぐれに行田から帰って来ると、秩父の連山の上に富士が淡墨色にはっきりと出ていて、夕日が寒く平野に照っていた。

かれは茶を飲みながら二三枚写生したまずい水彩画を出して友に示した。学校の門と、垣で夕日のさし残ったところと、暮靄(ぼあい)の中に富士の薄く出ているところと、それに生徒の顔の写生が一枚あった。荻生さんは手に取って、ジッと見入って、「君もなかなか器用ですねえ」と感心した。清三はこのごろ集めた譜のついた新しい歌曲をオルガンに合わせてひいてみせた。

寒い日に体を泥の中につきさしてこごえ死んだ爺(おやじ)の掘切(ほっきり)にも行ってみたことがある。そこには葦(あし)と萱(かや)とが新芽を出して、蛙(かわず)が音を立てて水に飛び込んだ。森の中には荒れはてた社があったり、林の角からは富士がよく見えたり、田に蓮華草が敷いたようにみごとに咲いていたりした。


「少女病」
電車は代々木を出た。
春の朝は心地が好い。日がうらうらと照り渡って、空気はめずらしくくっきりと透き徹(とお)っている。富士の美しく霞んだ下に大きい櫟林(くぬぎばやし)が黒く並んで、千駄谷の凹地(くぼち)に新築の家屋の参差(しんし)として連なっているのが走馬燈のように早く行き過ぎる。


「新撰名勝地誌」
地、丘上にあるがため、これに登れば市内の光景を始めとして、富士、筑波の諸峰隠見して目睫の間にあり。

※宇都宮の二荒山神社からの光景について。


「浅草十二階の眺望」
十二階から見た山の眺めは、日本にもたんとない眺望の一つであるということを言うのに私は躊躇しない。
それには秋の晴れた日に限る。十一月の末から十二月の初旬頃が殊に好い。東京では十一月はまだ秋の気分が残っていて、ところどころに紅葉などがあり、晴れた日には、一天雲霧をとどめずと言ったような好晴がつづくことから、殊に一日の行楽としては、その時分が最も適している。
十二階の上で見ると、左は伊豆の火山群から富士、丹沢、多摩、甲信、上毛、日光をぐるりと細かに指点することが出来る。
第一に目に着くのは富士である。東海の帝王、実際屹然(きつぜん)として群を抜いている。その下にやや左に偏って、足柄群山が見える。

2006年04月06日

西山宗因

富士は雪三里裾野や春の景

さらし干す夏きにけらし不尽の雪

斎藤徳元

煙にもすすけず白し富士の山

むさし野の雪ころはしか富士の雪

※煙にも・・・は、「富士の山」でなく「富士の雪」の資料も。(要チェック)

赤松恵子

向き直りをらむ裏富士朴散華

前田野生子

朝富士夕富士よ避暑たのしくて

石谷秀子

赤富士の前落葉松は露こぼす

石寒太

笠雲の富士遠くみて母憶ふ

船木みち子

元旦の富士みて川の流れみて

浅野余里女

富士の雲はれて樹海に虹の脚

※この方の情報を教えてください!

西尾テル子

赤富士もやがて紫夏の朝

※この方の情報を教えてください!

浅井青陽子

冬麗の富士目のあたり賀に参る

川村凡平

初富士や起しある田のニ三枚

川瀬カヨ子

一塊の雲三つ割れに富士の秋

千葉幸江

初冬富士見し夜は白き夢ばかり

2006年04月05日

松浦武四郎

「丁亥前記」
登岳も屈指五十一年、余未だ十九歳のときなりしが、吉田を上り、須走に下り、表口のほうを相らざりしかば、俗間に、北より上り南表口に下り、南より登り北に下るを、山を撃えざくとて忌むとは知れど・・・

松本十三女

雪解富士滝ごうごうと響かする

※この方の情報を教えてください!

深沢龍一

雪けむりあげ烈風の涅槃富士

森島久志

植ゑ終し田ごとに伊豆の逆さ富士

※この方の情報を教えてください!

森川許六

木枯らしやあとにひかゆるふじの山

成宮弥栄子

夜を登る富士灯の列を前後にす

瀬藤もと子

裏富士や雪解襞の荒々し

新倉矢風

登らんず富士真上より月照らす

松尾隆信

胸ぐらに迫る雪富士誕生日

2006年04月04日

村上元三

※2006年4月3日死去。ご冥福をお祈りします。


「昭島市立拝島第三小学校校歌」
○春は桜の朝ぼらけ
 仰ぐは清き富士の山
 学びの庭にいまたちて
 われらの誇り その名こそ
 拝島第三小学校

※村上元三作詞/吉田正作曲
※4番まである。

2006年04月03日

松橋利雄

夕富士や粽櫚剥ぐころの空の澄み

※この方の情報を教えてください!

松永鬼子坊

まざまざと影富士見るや富士詣

小林福女

裏富士や湖へ吹かるる草の絮

※この方の情報を教えてください!

小林一茶

巨燵より見ればぞ不二ふじの山

お花から出現したかふじの山

朝富士の天窓(あたま)へ投げる早苗かな

行としもそしらぬ富士のけぶり哉

朝不二や屠蘇の銚子の口の先

有明や不二へ不二へと蚤のとぶ

浅草の不二を踏へてなく蛙

浅草や家尻の不二も鳴雲雀

浅草や朝飯前の不二詣

浅草や犬も供して不二詣

明ぬ間に不二十ばかり上りけり

打解る稀の一夜や不二の雪

朝不二やとそのてうしの口の先

今出来た不二をさつそく時鳥

起て見よ蠅出ぬ前の不二の山

一不二の晴れて立けり初茄子

貝殻の不二がちよぼちよぼ春の雨

けぶりさへ千代のためしや春の立

蝸牛とも気永に不士へ上る也

かたつぶりそろそろ登れ富士の山

蟷螂が不二の麓にかゝる哉

斯う斯うと虻の案内や不二詣

駒込の不二に棚引蚊やり哉

蜻蛉やはつたとにらむふじの山

雲霧もそこのけ富士を下る声

かけ声や雲おしのけて不二下る

神の代や不二の峰にも泊り宿

九合目の不二の初雪喰ひけり

腰押してくれる嵐や不二詣

駒込の不二に棚引蚊やり哉

小盥や不二の上なる心太

背戸の不二青田の風の吹過る

涼しさやどこに住でもふじの山

鶺鴒やゆるがしてみろふじの山

涼しさや五尺程でもお富士山

三尺の不二浅間菩薩かな

涼しさや一またぎでも不二の山

するがぢは蝶も見るらん不二の夢

涼しさやお汁の中も不二の山

新富士の祝義にそよぐ蚊やり哉

西行の不二してかざす扇哉

達磨忌や箒で書きし不二の山

つんとして白梅咲の不二派

ちよんぼりと不二の小脇の柳哉

田子の浦にうち出て不二見かゞし哉

なの花のとつぱづれ也ふじの山

夏のよや焼飯程の不二の山

初松魚序ながらも富士の山

ほやつゞきことさら不二のきげん哉

富士ばかり高みで笑ふ雪解哉

富士に似た雲よ雲とや鳴烏

不二の草さして涼しくなかりけり

富士の気で鷺は歩くや大またに

富士の気で跨げば草も涼しいぞ

富士見ゆる門とてほこる扇哉

富士おろし又吹け〜と蚊やり哉

ふぐ食わぬ人には見せな富士の山

初夢に猫も不二見る寝やう哉

初夢の不二の山売都哉

始るやつくば夕立不二に又

御関やとその銚子の不二へむく

またぐ程の不二へも行かぬことし哉

むさしのや不二見へぬ里もほたる時

むさしのは不二と鰹に夜が明ぬ

麦刈の不二見所の榎哉

夕不二に手をかけて鳴蛙哉

夕立に打任せたりせどの不二

鎗の間は富士の見所ぞ時鳥

夕不二に尻を並べてなく蛙

涼風もけふ一日の御不二

涼風はどこの余りかせどの不二

わか草や町のせどのふじの山

脇向て不二を見る也勝角力(かちずもう)

亀殿のいくつのとしぞ不二の山

特に「一茶発句全集」を参考にした。

小野博子

初冨士にまみゆ自ずと息深く

松崎郁子

月の無き真夜の黒富士月見草

※この方の情報を教えてください!

2006年04月02日

桜の話題

<季節の話題>
桜の季節です。


吉野義子
 富士を截る一枝平らに朝桜
 夕桜一樹もて富士覆ひけり

山口青邨
 いろがみを貼りたる富士ぞ夕桜

松岡青蘿
 不二は白雲桜に駒の歩みかな

上島鬼貫
 雲や匂ふ海も桜も富士の枝

湯川雅
 富士桜より始まりし富士樹海

高澤良一
 八重桜花房重う富士を据え
 湧水と汝が奥津城と富士桜

若山牧水
 富士が嶺の麓ゆ牛に引かせ来て山桜植ゑぬゆゆしく太きを

沢村専太郎「紅萌ゆる丘の花(三高逍遥の歌)」
 希望は照れり東海の み富士の裾の山桜

宮本百合子「道標」
 下宿の神さんや娘や、その他おなじみの女たちに、せいぜい刺繍したハンカチーフだの何だのやっちゃ、大いに国威を発揚していたのさ。富士山(フジヤマ)だの桜だのってね。

徳田秋声「縮図」
 ある時は富士や桜や歌舞伎などとともに日本の矜(ほこ)りとして、異国人にまで讃美されたほどなので・・・

岡本かの子「富士
 山は晴れ、麓の富士桜は、咲きも残さず、散りも始めない一ぱいのときである。