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近松門左衛門

「信州川中島合戰」
地 さあ/\敵(かたき)の根は切つたり。國境(くにざかひ)迄お供といはんも此の足元。老母も氣遣ひ。御縁もあらば又重ねて隨分御無事で。其方(そつち)も無事で。さらば。/\と一禮のべ。
コハリ 別れて歸る勘介が。仁は玄徳智は孔明勇は關羽に並びなき。譽れは三國名は高き。富士を移して諏訪の不二。

謡 戀ゆゑ旅を信濃路や。 ナホス 淺間が嶽とつらねける。山の煙も我が思ひには。 フシ 丈も及ばじ。 フシ 富士の山。雪の肌に花の顔。鹿子斑(かのこまばら)の。雲の帶。肩に。素縫(すぬい)の。金紗の フシ 千鳥。裾野の模樣望月の。駒の追風そよ/\戦(そよ)ぐ。


浄瑠璃「聖徳太子絵伝記」
日本廻りのだけ/\の。ふじもつくばもめの下に。もゆるあさまのあさまにも。たにの小川のけふりかとひらやよかはの花ぐもり。見下ろすからに一かすみ。