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2007年12月05日

香川景樹

富士のねを木間木間(このまこのま)にかへり見て松のかげ踏む浮島がはら

2007年10月10日

加藤巌夫

「小学唱歌集」より「第二十七 富士山(ふじのやま)」
○ふもとに雲ぞ。かゝりける。
 高嶺にゆきぞ。つもりたる。
 はだへは雪。ころもはくも。
 そのゆきくもを。よそひたる。
 ふじてふやまの。見わたしに。
 しくものもなし。にるもなし。
○外國人も。あふぐなり。
 わがくに人も。ほこるなり。
 照る日のかげ。そらゆくつき。
 つきひとともに。かがやきて。
 富士てふ山の。みわたしに。
 しくものもなし。にるもなし。

※加藤巌夫作詞/原曲はハイドン作曲

2007年10月05日

片野望翠

ものゝふに川越問ふや富士まうで

※「續猿蓑」より

2007年09月05日

鹿島則孝

「神宮々司拝命記」
十月一日、晴、前七時過より霧立うす曇、十時より晴、後村曇立、正午神宮へ参宮、夫より朝熊山へ登る、則泰、敏夫、包三郎同道也、里程は、宇治橋より山上迄六拾町也、坂路中々に嶮し、後三時廿分に山上豆腐屋といふ旅籠店ニ着し、離れ座敷に休息し、荷物抔預け、又、坂路四町登りて虚空蔵堂あり、奥の院の脇に、富士山拝所あり、海上の眺望よし、

2007年06月15日

勝承夫

「神奈川県三浦市立初声中学校 校歌」
○清き相模の 大宮に
 若き叡智の 光り満ちて
 むらさきかすむ 富士天城
 純情きえて 契る我等

※勝承夫作詞


「神奈川県立三崎高等学校 校歌」
○緑はるかに雲こえて 輝く天城夢見る富士よ
 高き理想をおいてゆく 我等の友は親しく強し
 三崎高校幸ある我等

※作詞勝承夫/作曲小村三千三
※3番あるうちの2番


「山梨県立塩山高等学校 校歌」
○みのる葡萄に 青春の
 思を語る 甲斐の若人
 富士に理想の光を仰ぎ
 真理を追ひてはてなくすすむ
 塩山高校 永久に栄えあれ

※3番のうちの3番
※作詞勝承夫/作曲下総皖一


「富士市立元吉原中学校 校歌」
○若い生命が 明るくもえる
 希望の青空 濃青の海原
 夢大らかに 富士が嶺
 叡智の姿 澄むところ
 庭あり自治の 花ひらく
 元吉原よ かがやく母校

※3番のうちの1番
※作詞勝承夫/作曲高木東六


「横浜市立神奈川中学校 校歌」
○仰ぐ紺碧 希望の光
 丘はわれらの 夢湧くところ
 清き富士ヶ根 見晴らす窓に
 燃える純情 みなぎる力
 神奈川中学 幸ある母校

※3番のうち1番
※作詞勝承夫


「横浜市立綱島小学校 校歌」
○朝雲に 夕雲に
 輝く富士ヶ嶺 心の友よ
 かわらぬ姿 きよらかに
 仰ぐ綱島 わが母校
 その名讃えて
 歌おう われら

※3番のうち3番
※作詞勝承夫/作曲小出浩平


「横浜市立中山中学校 校歌」
○みどり輝き 風薫る
 希望の丘に 花開く
 武相の山と 富士ヶ根
 こころの友と 親しみて
 伸び行くわれら わが母校

※3番のうち1番
※作詞勝承夫/作曲小村三千三


「横浜市立浅間台小学校 校歌」
○港の空は はてもなく
 夢がひろがる 青い空
 富士もほほえむ浅間台に
 われらはのびゆく 若鳥小鳥
 あすの日本に 飛び立つ力

※3番のうち1番
※作詞勝承夫/作曲松井健祐


「横浜市立白根小学校校歌」
○丹沢 箱根 富士の空
 夕日にはえて 夏の日も 冬の日も
 白根は楽しい あすを待つ
 子どもの希望 かがやく広場
 はえのまなびや 歌おうわれら

※3番のうち3番
※作詞勝承夫/作曲井上武士


「横浜市立希望ヶ丘小学校校歌」
○はるかに富士も 大山も
 はれて夢見る 子どもの世界
 あすをまつ 健康な
 この気風 この学校
 希望ヶ丘のさちあるわれら

※3番のうち3番
※作詞勝承夫/作曲井上武士


「神奈川県大和市歌」
○風光る 風光る
 さわやかな 緑の大地 英気いまみなぎる ところ
 富士阿夫利清く そびえて ここにあり
 躍進のまち わが大和市 われらの大和市

※3番のうち1番
※作詞勝承夫/作曲井上武士


「小平市小平第三中学校 校歌」
○朝に夕べに 美しい
 富士がはるかに
 広い世界を教えてる
 あこがれの わく泉
 やりとげる この気風
 第三中学 たのしく永遠に
 はえて輝く われらの母校

※3番あるうちの3番
作詞勝承夫/作曲平井康三郎


「小平市小平第一中学校 校歌」
○つらなる多摩の丘越えて
 ほほえむ富士よ 澄み渡る峰
 小平一中 幸ある我等
 変わらぬ誠 たたえて常に
 交わす友情 平和の理想

※3番あるうちの2番
※作詞勝承夫/作曲下総皖一


「法政大学 校歌」
○若き我等が命のかぎり
 ここに捧げてああ愛する母校
 見晴るかす窓の富士ヶ嶺の雪
 螢集めむ門の外濠
 良き師良き友集い結べり
 法政 おお わが母校
 法政 おお わが母校

※2番あるうちの1番
※作詞勝承夫/作曲近衛秀麿


「駅伝を讃えて」より
○若い豹は春の象徴
 君たちが走ると
 東海に春がよみがえる
 富士はおおらかに微笑み
 相模の海は夢多い調べをおくる

※最初の部分
※作詞勝承夫


「星薬科大学 校歌」
○望み見る 遙かなる
 大富士ヶ根は 英気に満てり
 錬成の姿は勢う
 清秀の友等 ここに励しむ
 これぞわが母校 熾なり星薬大

※4番あるうちの4番
※勝承夫作詞/山田耕筰作曲


「東京都立昭和高等学校 校歌」
富士は茜に 秩父は暮れて
 映える武蔵野 平和みなぎる
 若き叡知の 星座のもとに
 明日の文化を われら築かむ
 美しき自治の庭 昭和高校
 永遠に栄えよ われらが母校

※3番あるうちの3番
※勝承夫作詞/平井康三朗作曲


「東京都立武蔵丘高等学校 校歌」
○鳥のゆくへは 秩父か富士
 空をあおげば 心はをどる
 高き文化を目ざして進む
 純情の道 自治の学舎
 おお 誇りあり わが母校

※3番あるうちの2番
※勝承夫作詞/安部幸明作曲


「東京都立志村高等学校 校歌」
○あこがれの 雲映えて
 見よ澄みわたる 富士ヶ嶺秩父
 明日の世界を 楽しく描く
 純情の 歌もひびくよ
 美しき 理想の泉
 志村高校 永遠に幸あれ

※3番あるうちの3番
※勝承夫作詞/下総皖一作曲


「荒川区立第三中学校 校歌」
○曳船の音冴えて
 見はるかす富士筑波
 昔も今も汐入は
 希望ゆたかに新しく
 平和の文化築く町 
 友情燃えてのびゆくわれら

※3番あるうちの2番
※勝承夫作詞/中田喜直作曲


「栃木県小山市立小山第二小学校 校歌」
○映えよ輝け 富士筑波
 小鳥も勇む 桜の空は
 いつも力の みなぎる広場
 歌おうよ  この窓を
 小山第二は 栄えある母校

※3番あるうちの3番
※勝承夫作詞/井上武士作曲


「江戸川区立篠崎第二小学校 校歌」
○はるかな富士と はるかな秩父 はるかに注ぐ江戸川を
 友として 心も清く清らかに
 日本の明日を担うもの 篠崎第二 栄ある母校

※3番あるうちの3番
※勝承夫作詞/小出浩平作曲


「埼玉県坂戸市立住吉中学校 校歌」
○純情の 友つどう
 若き感激 つねにみなぎる
 秩父の雲に 富士が嶺
 はるかに目指す 理想を語る
 夢あり われら ともにゆく
 平和の道よ はてなき未来

※3番あるうちの2番
※勝承夫作詞/下総皖一作曲


「東京都立葛飾野高等学校 校歌」
○雲をうかべて ほほえむ富士
 叡智のひとみ はるかにそそぐ
 夢多き日の 友美しく
 われら純情 自立の気風
 誓う葛飾野 われらがほこり

※3番あるうちの2番
※勝承夫作詞/団伊玖磨作曲


「川崎市立井田中学校 校歌」
○若き日の喜びを
 歌えよたたえよ柳の下で
 井田にみなぎる自立の精神
 見晴らす富士に栄光を
 誓う学舎我等が母校

※3番あるうちの3番
※勝承夫作詞/高田信一作曲


「千葉県松戸市立常盤平中学校 校歌」
○さわやかな 青空よ
 なごやかな そよ風よ
 富士も筑波も はるかに晴れて
 空は大きい みどりは清い
 楽しい大地 常盤平
 わが中学に 集まる光よ

※3番あるうちの1番
※勝承夫作詞/市川都志春作曲


「川崎市立東住吉小学校 校歌」
○青い大山 白い富士
 われらの窓に 希望みなぎる
 みんな なかよく たゆみなく
 あすの平和を 築くもの
 東住吉 はえある 母校

※3番あるうちの3番
※勝承夫作詞/村井恒雄作曲


「埼玉県さいたま市立大東小学校 校歌」
○広い世界を 目指していくよ
 小さいつばさに あふれる夢よ
 はるかな秩父 富士までも
 ひびく歌声 はつらつと
 勇む大東 栄あるわれら

※3番あるうちの3番
※勝承夫作詞/中田喜直作曲


「千葉県船橋市立二宮小学校 校歌」
○霞む筑波よ ほほえむ富士
 高い雲間に さえずるひばり
 夢もひろがる 二宮に
 あすの日本を うけついで 
 いつもたゆまず やりぬくわれら

※3番あるうちの3番
※勝承夫作詞/平井康三郎作曲


「埼玉県立所沢高等学校 応援歌」
○映えよ富士ヶ根輝け秩父
 若い翼の巣立ちの空ぞ
 おお我等所沢高
 青春の命はばたく
 おお我等所沢高

※4番あるうちの3番
※勝承夫作詞/牧野知成作曲


「葛飾区立道上小学校 校歌」
富士が呼んでる 大空遙か
 世界の友も呼んでいる
 われらは仰ぐ平和の光
 つなぐこの手に道上の
 誇る自立の誓いがこもる

※3番あるうちの2番
※勝承夫作詞/芥川也寸志作曲


「東京都葛飾区立亀有中学校 校歌」
○夕べ遥かに 富士映えて
 明日の平和を 楽しく描く
 届け感激の この歌声よ
 希望の雲の 輝くところ
 亀有中学 栄あり永遠に

※3番あるうちの3番
※勝承夫作詞/団伊玖磨作曲


「大田区立東調布第三小学校 校歌」
○明るい光 満ちわたる
 鵜ノ木の丘は 希望の広場
 富士もはるかに呼ぶところ
 楽しい学校 東調布
 第三 第三 われらは進む

※3番あるうちの1番
※勝承夫作詞/平井康三郎作曲


「東京都小金井市立小金井第三小学校 校歌」
富士もはるかによんでいる
 世界の友も よんでいる
 小金井第三 自立の気風
 明日の日本の 花がさく
 たのしい庭よ わが母校

※3番あるうちの3番
※勝承夫作詞/平井康三郎作曲


「神奈川県伊勢原市立大田小学校 校歌」
○大山 丹沢 富士 箱根
 つらなる山も晴れやかに 美しく
 相模は夢のわくところ
 元気に育つ なかよしの
 大田のこどもは 明るく強い

※3番あるうちの1番
※勝承夫作詞/平井康三郎作曲


「台東区立忍岡中学校 校歌」
○霞む野を越え はるばると
 富士も筑波も 楽しくほほえむ
 明日待つ雲は 晴れやかに
 いまわが窓に 新しく
 栄えある未来 目指して進む
 忍岡の われら幸あり

※3番あるうちの3番
※勝承夫作詞/平井康三郎作曲


「練馬区立大泉南小学校 校歌」
○大きくのびよ そだてよと
 はるかな富士も よんでいる まねいてる
 なんでもやりぬく こどもの意気の
 あふれる泉 大泉
 南のわれらは 素直で強い

※3番あるうちの2番
※勝承夫作詞/平井康三郎作曲


「千葉県我孫子市立我孫子中学校 校歌」
富士ヶ峰とおく 夢をよび
 緑の山河 春をよぶ
 希望の光 仰ぎつつ
 純情もゆる 若人が
 あつまる我孫子中学校

※3番あるうちの3番
※勝承夫作詞/中山晋平作曲


「LaLaLa…City Song(東京都小平市 市歌)」
○かおるそよ風 茶の花越えて 
 清き富士ヶ根 輝く御獄
 光みなぎる小平に
 人等集まり 新しき
 平和を目指し 楽しく進む

※3番あるうちの3番
※勝承夫作詞/下総三貂邏


「下妻市立千代川中学校 校歌」
○ひばりの歌よ 麦の波
 秋は果てない みのりの広場
 みのりの世界
 富士の夕空 はるばると
 理想を高く えがくもの
 意気あり千代川 輝くわれら

※3番あるうちの3番
※勝承夫作詞/平井康三郎作曲


「練馬区立豊玉第二中学校 校歌」
○きょうは学びの 庭の友
 明日は世界に雄飛する 友となる
 はるかに富士も よぶところ
 自立の気風 うけついで
 豊玉二中 栄えある母校

※3番あるうちの3番
※勝承夫作詞/平井康三郎作曲


「静岡県立伊東商業高等学校校歌」
○白い雲 青い海
 はるかに富士も呼ぶところ
 明日まつ われら開拓の 誓い新たに
 情熱の わきあがる
 この胸と この大地
 伊東商校 ゆくてはてなし

※3番あるうちの2番
※勝承夫作詞/平井康三郎作曲

2007年06月11日

風間誠之

「静岡県立富士東高等学校 校歌」
芙蓉の峰に 抱かれて
 日輪昇る 東雲に
 使命栄えある若人が
 理想はるけく 剛き身に
 新しき世を 築くかな
 いざ吾ら 強く 気高く
 伸びゆかむ
 永久に栄えむ 富士東高校

※3番のうち3番
※作詞風間誠之/作曲渡瀬祥光

2007年04月15日

川田順

不二のねのふもと萱原はてもなしくわくこう鳴くと耳そはたてつ

雪の富士を眼前(まなかひ)にして家ありぬぶなの大木(おほき)の黄ばめる陰に

何もなしただ星空を黝(くろ)うせる大き斜面のおごそかなりや

富士を仰ぐ南おもての小座敷に部屋かへてあり湯をいで来れば

夕富士の尾根灰いろに靄(もや)ごもる大き景色の涙ぐましも

富士見ゆと君をまねきぬ梅折りにふと登りたる草山のうへ

おぼろ富士みまもる君がうるはしの瞳にうつる海の濃


※以下、岳麓湖上十一首のうち5首

鮒つりてかへる湖べの眞萩原夕日の富士となりにけるかな

夢遠し神の御岳のふもと村みづうみ清きはつ秋にして

鍬すてて■(をさ)の手やめて皆あふげ神の御岳に虹あらはれぬ
※■(をさ):竹冠の下に「成」

秋風や神代の人の柩など沈めるあらむ山のみづうみ

笛ぶくろ君紐とかず湖の上に月夜の富士のただふくるかな

2007年02月07日

梶井基次郎

「闇への書」
すると知識と視覺との間にはあんなにも美しい神祕が存在するのか。
私は以前に芭蕉の
   霧時雨不二を見ぬ日ぞ面白き
の句に非常に胸を打たれたことを思ひ出した。さうかも知れない。


「路上」
ある日曜、訪ねて来た友人と市中へ出るのでいつもの阪(さか)を登った。
「ここを登りつめた空地ね、あすこから富士がよく見えたんだよ」と自分は言った。
 富士がよく見えたのも立春までであった。午前は雪に被われ陽に輝いた姿が丹沢山の上に見えていた。夕方になって陽がかなたへ傾くと、富士も丹沢山も一様の影絵を、茜の空に写すのであった。
 ――吾々は「扇を倒(さかさ)にした形」だとか「摺鉢(すりばち)を伏せたような形」だとかあまり富士の形ばかりを見過ぎている。あの広い裾野を持ち、あの高さを持った富士の容積、高まりが想像でき、その実感が持てるようになったら、どうだろう――そんなことを念じながら日に何度も富士を見たがった、冬の頃の自分の、自然に対して持った情熱の激しさを、今は振り返るような気持であった。

2007年01月21日

加藤道夫

「なよたけ」
衛門 今時分でも頂上には雪が積っているのだそうですね?
綾麻呂 積っている。……儂(わし)がここへ赴任して来た当時は半分から上は純白の雪に蔽(おお)われていた。……この長雨で、あるいは幾らか溶けてしまったかもしれんが、……ま、いずれ雲が晴れてみれば分る。……玲瓏と云うか崇厳と云うか、とにかく、あれは日の本の秋津島の魂の象徴だ。……儂はもう文麻呂の奴に早くみせてやりたくてな。
衛門 手前だって早く見とうござります。
綾麻呂 いや何も別にお前には見せないと云うわけではない。ただあの不甲斐ない息子が一時も早く迷いの夢から覚めてくれれば、と思っているのだ。あの崇厳な不尽ヶ嶺の姿をみれば、少しは気持が落着いてくれるだろう。……全く、あいつは不甲斐のない男になってしまったものだ。

急に、雨雲が晴れ渡って、太陽が燦々と輝きはじめた。
衛門 おう! 旦那様! あれは不尽山ではございませんか! あれは不尽山ではございませんか! (前方右手を指さしている)
綾麻呂 うむ! そうだ! あれが不尽の山だ! あれが不尽の山だよ! (空を仰いで)おお、それにしても何と云う不思議だ! つい今しがたまで、あのように鬱陶(うっとう)しく立ちこめていた雨雲が、いつの間にやら、まるで嘘のように跡方もなく晴れ渡ってしまったではないか?……それに、どうだ! 衛門! 今日の不尽は嘗(かつ)て見たこともない神々しさだぞ! こんな荘厳な不尽を見るのは儂も初めてだ! 見ろ! あの白銀(しろがね)に燦(きら)めく頂きの美しさを!……おう! 後光だ! あれはまるで神の後光だ!
いつの間にか、文麻呂が向う側から丘の中腹に姿を現わして、輝やかしい瞳でじっと不尽山をみつめながら、立っている。丘の上の二人は気が付かない。舞台右手奥の方にも遠い連山が見え始める。

綾麻呂 (遠く不尽を望みながら、朗々と朗誦し始める)……
天地(あめつち)の 分れし時ゆ 神(かん)さびて
高く貴き 駿河なる 布士(ふじ)の高嶺
天の原 ふり放(さ)け見れば 渡る日の
影も隠ろい 照る月の 光も見えず
白雲も い行き憚(はばか)り 時じくぞ
雪は降りける 語り継ぎ 言い継ぎ行かむ
不尽の高嶺は……

文麻呂 (不尽を仰ぎながら)あの時代には国中の人達が美しい調和の中に生きていたのですね。……お父さん! 僕はしあわせです。(うっとりとして)万葉を生んだ国土。うつくしい国土。僕はこの国に生れたことを心の底からしあわせに思っています。

2006年08月01日

唐木培水

三寒やエンデバの富士白一点

2006年07月11日

加藤磐斎

冨士  そめいろのやまの東は人も見す
      この世にたかき冨士のしら雪

2006年06月19日

川本朋紘

富士うつし富士の伏流水冷ゆる

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川田蛎雪

初雪の富士を車窓に眺めつゝ

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2006年06月18日

川端茅舎

初富士や石段下りて稚児ケ淵

野分跡暮れ行く富士の鋭さよ

川村紫陽

芦枯れて富士逆富士ひかり合ふ

裏富士に雲のたてがみ雪来るか

花浅沙富士より青き逆富士

桐の花富士と大空頒ちけり

富士に身を乗り出して松手入れかな

見馴れゐて見飽かぬ富士や初霞

天空に白妙の富士磯遊び

追羽子に富士より高き天のあり

左富士野川曲れば稲架曲がる

疾風富士水中芦の芽の育ち

梅林の山越しの富士小さかり

2006年06月17日

川口重美

傾ぐ冬富士人轢きし汽車動きそむ

2006年06月14日

加賀千代(千代女・千代尼・素園)

名月や何所までのばす富士の裾

富士の笑ひ日に日に高し桃の花

うぐひすや声からすとも富士の雪

富士はまだ水に明るし初がすみ

2006年05月27日

神谷三八朗

別れては真向かいに見る遥か富士

2006年05月26日

管裸馬

いささかの水あり五月富士写す

浮かみ出て初雪の不二歪みなし

小さな幣杖に結びつ富士行者

富士行者つゞく草屋の蚊屋の前

2006年05月25日

金森徳次郎

「少年少女のための憲法のお話」
一三 国の象徴(しるし)
子どもたちが、動物園へ行ってきました。帰ってからの夕食のあとで、おもしろそうに笑って、はしゃいでいます。見ると、妙なものをかいて、何だかあてっこをしています。きつねだ、きりんだ、猿だとさわいでいます。つのを見れば、牛を知り、富士山を見れば、日本を考え、国旗を見れば、日本を思うのは、あたりまえです。わたくしたちは、天皇をあおぐと、心にしみいるように深く、日本を感じます。これが象徴(しるしのこと)の意味です。甲を見ると、乙を心にピタリと感じられるときに、甲は乙の象徴です。桜の花がさいた、春がきた。紅葉が赤い、秋が深くなった。こんなばあいに、象徴の意味がはっきりします。

2006年05月19日

神田岩魚

裏富士の星の光芒鳴く夜鷹

大冨士の闇のふるへる虎鶫

2006年05月13日

勝又一透

富士消えて空の濁れる春深し

朝の富士大きく生まれ梅の宿

凍蝶のたちたる籠に不二のこる

木枯のはるかなものに富士ひとつ

打ち晴れて富士孤高なる仏の座

成人の日の裏富士のうつくしき

初富士の汀の果てに立てりけり

枯萱の山ふかく来て富士に会ふ

夕富士の消ぬべくありぬ花瓢

大富士の愛のごとくに大泉

ちちははの朝寝の富士の美しく

大冨士にひれ伏す軒端寒晒

ふるさとの不二かゞやける薺かな

2006年05月11日

勝亦年男

影富士の及ぶ花野の県境

冷し瓜富士の真清水戸々に湧き

勝俣のぼる

初富士の紅さしそめて町の上

2006年05月03日

紙田幻草

初雪の初冠雪の富士といふ

2006年04月20日

金田清光

富士行者杖の日の丸古りにけり

金子麒麟草

寒夕焼遠富士の上の一つ星

金子潮

不二初雪蚕を終へし窓開かれて

2006年04月19日

桂樟蹊子

富士晴れて代田へ分つ映り水

黄菅群れ淡くて富士の沈みがちに

鍵和田ゆう子

遠富士に雲の天蓋雛祭

富士隠す冬山ひとつ東歌

初荷幟の白さを競ひ富士ある町

茎立や富士ほそるほど風荒れて

※(ゆう=禾+由)

2006年04月18日

金子兜太

富士を去る日焼けし腕の時計澄み

妻に鶏卵われに秋富士の一と盛り

富士たらたら流れるよ月白にめりこむよ

破戒僧忽然と現る富士忘れいしに

「すべて腐爛(くさ)らないものはない」朝涼の富士

朝がきて蜻蛉いっせいに富士突き刺す

猪走る朝富士褐色の腐り

富士見えぬ真昼銀漢も地に埋まり

富士黒く露にまみれて嘔吐の熊

五月富士妻癒えたれば野路に親し

2006年04月16日

角川源義

火の祭富士の夜空をこがしけり

黄鶲に焦土のごとく富士くだる

富士近き街に目覚めぬ百日紅

繍線菊(しもつけ)の道とほどほし富士の前

海遠く富士に雪来と楮蒸す

のぼり来て冨士失ひぬ花胡桃

富士近き街に目覚めぬ百日紅

亀井糸游(亀井絲游)

夜は富士の闇のかぶさる冬構

2006年04月14日

片岡奈王

初富士をさへぎるもののなかりけり

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2006年04月06日

川村凡平

初富士や起しある田のニ三枚

川瀬カヨ子

一塊の雲三つ割れに富士の秋

2006年04月01日

勝浦文童

黙々と馬行き違ひ不二詣

2006年03月28日

勝俣泰亨

火祭の吉田に応へ富士の火

勝俣鈴子

富士まともなる氷店よくはやり

2006年03月27日

角田竹冷

元朝や軒は古りても富士の山


※姓は「かくた」とも「つのだ」とも。

2006年03月26日

角川照子

赤彦の夕陽の歌や雪解富士

2006年03月25日

加藤楸邨

初富士やねむりゐし語の今朝めざめ

富士の紺すでに八方露に伏す

富士初雪日向はどこも鉄くさし

五月富士屡々湖の色かはる

藷負ふや焦土の果の夜明富士

煖房車黙せばいつも冨士があり

加藤知世子

皹赤し富士の向ふの夕茜

富士が主体の嵐のオブジェ富士薊

河東碧梧桐

この道の富士になりゆく芒かな

裏富士の囀る上に晴れにけり

富士晴れぬ桑つみ乙女舟で来しか


「南予枇杷行」
 この石仏から、曲流する肱川と大洲の町を見おろす眺望は、一幅の画図である。富士形をした如法寺山の、斧鉞を知らぬ蓊鬱な松林を中心にして、諸山諸水の配置は、正に米点の山水である。


河東碧梧桐について

各務麗至

うらおもてなし磐石の富士不二

河合甲南

初富士の美しく旅恙なく

河合甲南

初富士の美しく旅恙なく

加茂達彌

元日の富士を連れ出す車窓かな

加倉井秋を

富士にまだ明るさ残る門火焚く

目の力あへなかりけり富士に雪

雪解富士晴れて喜び榧飴売

夕不二やひとりの独楽を打ち昏れて

加舎白雄

不二晴よ山口素堂のちの月

2006年03月20日

香取佳津美

春富士を目につなぎ来て旅装解く

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甲斐遊糸

雲上に冠雪の富士七五三

2006年03月19日

桂信子

たてよこに富士伸びてゐる夏野かな

五月富士全し母の髪白し

遠富士へ萍流れはじめけり

藻の花に音なく富士の顕ちにけり


桂信子について

兼堀なみ子

遠富士の尖りをくろく冬夕焼

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金尾梅の門

初富士や木々思はずも葉をふるふ

川上弘美

湯屋の富士描きなほされて夏に入る

金子光晴

「五つの湖」
○五つの湖が
 ふじをめぐる。
○山中湖は鶺鴒(せきれい)。
 霧のなかの
 かるい尾羽。
○額ぶち風な河口湖。
 樹海のふところからとりだした珠。
 明眸(めいぼう)の精進。
 嫉みぶかさうな、秘やかな西湖。
 そして、無の湖、本栖湖よ。
○五つの湖が
 ふじをみあげる。
○芒すすきからのぞく
 雪の額。
○緒が切れて
 裾野にこぼれた五つの珠。
○五つの湖がしぐれると
 ふじはもう、姿がみえない。
○移り気なふじよ。
 雪烟(ゆきけむり)にかくれまはり
 つゆつぽい五つの湖と
 ふじは心の遊戯をする。
○五つの湖を
 めぐりあるくふじは
 どの鏡にもゐて
 どれにも止まらない。


「富士」より
雨はやんでゐる。
息子のゐないうつろな空に
なんだ。糞面白くもない
あらひざらした浴衣のやうな
富士

2006年03月16日

笠木以都子

弥生尽冨士山頂に入る夕日かな

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垣沼千代子

残雪の片裾長し女富士

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2006年03月15日

加藤淇水

波たたむ大秋晴れの逆さ富士

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2006年03月12日

影島智子

蛇匂ふ風に歪みし逆さ富士

身じろがぬ富士と暮して畦塗りぬ

どこからも正面に富士初耕

田植機の始動にゆらぐ逆さ富士

借景の富士の高さに松手入

2006年03月11日

加藤巧

お中道夏霧が来てかきしけり

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加藤岳雄

笠雲をすこし阿弥陀に皐月富士

2006年03月10日

賀茂真淵

「にひまなび」 (邇比麻那微)
赤人の歌の詞は、吉野川如なすさやに、心は富士の嶺ねのごと、準よそり無く高し。人麻呂とは天地の違ひ有れど、共に古の勝れたる歌とせり。是等より前に、此の人々より勝れたる言も有れど、詠み人の名の聞えぬはこゝに云はず。

2006年03月01日

川崎展宏

冬すみれ 富士が見えたり 隠れたり


川崎展宏について

2006年01月28日

蒲原有明

「松浦あがた」
南、島原半島の筑紫富士(温泉岳)と遥にあひたいし、小城(をぎ)と東松浦との郡界の上に聳え、有明海沿岸の平野を圧するものを天山(てんざん)――また、あめやまともいふ――となす。この山ことに高しとにはあらざれども、最(もつとも)はやく雪を戴くをもて名あり。蓋(けだ)しその絶巓(いただき)は玄海洋(げんかいなだ)をあほり来る大陸の寒風の衝(つ)くに当ればなり。

いかづち夕に天半(なかぞら)を過ぐ、烏帽子、国見の山脈に谷谺(こだま)をかへせしその響は漸く遠ざかれり、牧島湾頭やがて面より霽れたれども、退く潮の色すさまじく柩を掩ふ布のごとき雲の峯々の谷間に埋れゆくも懶(ものう)げなり。くしや、この黄昏の空より吹きおろす秋風は遽(にはか)に万点の火を松浦富士(越岳(こしだけ))の裾野に燃しいでたる。

この阜のいただきに公園地あり、木の下道清く掃(はら)ひて、瀟洒なる茶亭を設く。呼子湾を圧するながめこころよし。ここよりは小川、加唐(かから)の島々をも指点しうるべく、東南の空はるかに筑紫富士をのぞむ。

2006年01月25日

嘉村礒多

「滑川畔にて」
ユキは少女時代を瀬戸内海に沿うた漁師町で成長したから、さして水の上が珍らしくないであらうが、私は山國育ちで、こんな小舟に棹したことさへ、半生にないのである。私は舷に凭れてぢつと蒼い水面に視入つた。ふと頭を上げて遙の遠くに、富士や箱根や熱海の、淡い靄につゝまれた緑青色の連山の方をも眺めた。島の西浦の、蓊鬱と茂つた巨木が長い枝を垂れて、その枝から更に太い葛蘿(つたかづら)が綱梯子のやうに長く垂れた下の渚近くをめぐつて、棧橋のそばの岸で私達は舟を棄てた。

二人は、身體を捩ぢて、窓外の七里ヶ濱の高い浪を見た。帆かけ舟が一艘、早瀬の上を流れてゐた。
「七里ヶ濱ですか。ほれ中學の生徒のボートが沈没したといふのはここですね。……眞白き富士の嶺、みどりの江の島、仰ぎ見るも今は涙――わたしたちの女學生時代には大流行でしたよ。」
「なるほど、僕らも歌つた、歌つた。古いことだね。」

葛西善蔵

「浮浪」
「大船で乗替へて向うへ着くと十二時一寸過ぎになるんだが、宿屋で起きるか知ら?……」と私は話しかけたが、
「さうですかねえ」と、襟に頤を埋めて、黙りこくつた表情を動かさなかつた。
 やはり十四五年前富士登山の時、山を下りて腹を痛めて一週間ばかし滞在してゐたずつと町の奥の、古風なF屋と云ふ宿屋の落付いた室が思ひ出されたりした。