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「浮浪」 「大船で乗替へて向うへ着くと十二時一寸過ぎになるんだが、宿屋で起きるか知ら?……」と私は話しかけたが、 「さうですかねえ」と、襟に頤を埋めて、黙りこくつた表情を動かさなかつた。 やはり十四五年前富士登山の時、山を下りて腹を痛めて一週間ばかし滞在してゐたずつと町の奥の、古風なF屋と云ふ宿屋の落付いた室が思ひ出されたりした。
投稿者: Owner 日時: 2006年01月25日 22:11 | この内容のURL