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川田順

不二のねのふもと萱原はてもなしくわくこう鳴くと耳そはたてつ

雪の富士を眼前(まなかひ)にして家ありぬぶなの大木(おほき)の黄ばめる陰に

何もなしただ星空を黝(くろ)うせる大き斜面のおごそかなりや

富士を仰ぐ南おもての小座敷に部屋かへてあり湯をいで来れば

夕富士の尾根灰いろに靄(もや)ごもる大き景色の涙ぐましも

富士見ゆと君をまねきぬ梅折りにふと登りたる草山のうへ

おぼろ富士みまもる君がうるはしの瞳にうつる海の濃


※以下、岳麓湖上十一首のうち5首

鮒つりてかへる湖べの眞萩原夕日の富士となりにけるかな

夢遠し神の御岳のふもと村みづうみ清きはつ秋にして

鍬すてて■(をさ)の手やめて皆あふげ神の御岳に虹あらはれぬ
※■(をさ):竹冠の下に「成」

秋風や神代の人の柩など沈めるあらむ山のみづうみ

笛ぶくろ君紐とかず湖の上に月夜の富士のただふくるかな