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2007年11月25日

松尾捨治郎

「國語論叢」の「國語學史篇」より
其の中に方言に關する事が記載されて居るが、之を綜合すると、方言座談會といつてもよいやうな會が、二回程あつたやうである。その大體を紹介する。
其の第一は、第二卷の『じ ぢ のけぢめの條』に見えて居る。即ち
時 文政の初年
處 鐸ノ屋 藤井高尚の京都塾
人 1 吉田 直堅(土佐人) 2 本居 太平
  3 塙 保己一 4 大堀 正輔
  5 義門
といつた構成で座談が行はれた。此の時の話題其の他が詳かでないが、次のやうな談話の行はれたことだけは解つてゐる。
  吉田「郷里土佐では富士の山は必ずふじ山 藤の花はいつもふぢ とかくこと、女わらべも間違はない。口で呼ぶのが區別されでゐるからである。然るに京に出て三年五年住んでゐた女などは、歸國してことさらめいて解らぬやうにいふ。

2007年06月29日

正富汪洋

トルストイを友といはむにわれおもな富士の東に爪喰(は)みて居る

2007年06月07日

丸山薫

「静岡県立榛原高等学校 校歌」
秀麗富士に理想を仰ぎ
 悠久大井の語るを聴かん
 山河明媚を誇れる国に
 花さく園はわれらがつどい
 六棟窓にはげみあり
 まなびは高く真理を拓く

※3番のうち1番
※作詞丸山薫/作曲平井康三郎

2007年05月12日

升本栄子

明けて行く赤富士に声あげにけり

2007年04月10日

前田夕暮

まなかひに朝の富士あり天雲をつらぬきて赤くそひえたるかも

黄ばみたる桑畑の上に晝の富士ながめてひとり口笛を吹く

雪あらぬ富士の全面に翳はなし粗放厖大にして立ちはだかれり

裏富士のかげりふかくして旗たつる家あり兵のいでたらるならむ

駿河野をわが行きしかば橘の花にほふなり富士うらわかく

はろばろと雪をさかまき青空にしまきするみゆ朝晴れし富士

2007年03月19日

松木淡々(半時庵)

朝霜や杖で画きしふじの山

春二つ見下す不二の一夜哉

2007年02月25日

真鍋美恵子

さやる雲の一ひらもあらず富士の裾はまたく展けたり湖の上に

2007年02月17日

松尾芭蕉

霧しぐれ富士を見ぬ日ぞ面白き

富士の山蚤が茶臼の覆かな

雲を根に富士は杉形の茂りかな

一尾根はしぐるる雲か富士の雪

富士の風や扇にのせて江戸土産

富士の雪慮生が夢を築かせたり

目にかかる時やことさら五月富士


「奥の細道」
弥生も末の七日、明ぼのゝ空朧々として、月は在明にて光おさまれる物から不二の峯幽にみえて、上野谷中の花の梢又いつかはと心ぼそし。
むつまじきかぎりは宵よりつどひて舟に乗て送る。千じゆと云所にて船をあがれば、前途三千里のおもひ胸にふさがりて幻のちまたに離別の泪をそゝく。
   行春や鳥啼魚の目は泪

室の八島に詣す。同行曾良が曰、「此神は木の花さくや姫の神と申て富士一躰也」。無戸室に入て焼給ふちかひのみ中に、火々出見のみこと生れ給ひしより室の八島と申。又煙を読習し侍もこの謂也」。将、このしろといふ魚を禁ず。縁起の旨世に伝ふ事も侍し。


「野ざらし紀行」
崑崙は遠く聞き、蓬莱・方丈は仙の地なり。まのあたりに士峰地を抜きて蒼天を支へ、日月のために雲門を開くかと。向かふところ皆表にして、美景千変す。詩人も句を尽くさず、才子・文人も言を絶ち、画工も筆捨てて走る。若し藐姑射の山の神人有りて、其の詩を能くせんや、其の絵をよくせん歟。
  雲霧の暫時百景を尽しけり


「幻住庵の記」
比叡の山、比良の高根より、辛崎の松は霞をこめて、城あり、橋あり、釣たるる舟あり、笠取に通ふ木樵の声、ふもとの小田に早苗とる歌、蛍飛びかふ夕闇の空に水鶏のたたく音、美景物として足らずといふことなし。中にも三上山は士峰の俤に通ひて、武蔵野の古き住みかも思ひ出でられ、田上山に古人をかぞふ。

2007年01月23日

正岡子規

一日一日富士細り行く日永哉

永き日に富士のふくれる思ひあり

佐保姫は裾のすがるや富士の山

春風や吹のこしたる富士の雪

春風の吹き残したり富士の雪

春風の高さくらべん富士筑波

鼻先の富士も箱根も霞みけり

其中に富士ぼつかりと霞哉

富士薄く雲より上に霞みけり

富士の根の霞みて青き夕哉

日本は霞んで富士もなかりけり

富士は雲に隠れて春の山許り

富士筑波西には花よあすか山

若草や富士の裾野をせり上る

鶏鳴くや小冨士の麓桃の花

ぼんやりと大きく出たり春の不二

衣更着や稍なまぬるき不二颪

此頃はひらたくなりぬ弥生不二

春風の脊丈みしかし不二のやま

春風やごみ吹きよせて不二の影

春風や不二を見こみの木賃宿

雪ながら霞もたつや不二の山

薄黒う見えよ朧夜朧不二

不二の山笑はねばこそ二千年

炉塞や椽へ出て見る不二の山

汲鮎や釣瓶の中の不二の山

五六尺不二を離るゝひはりかな

雲雀野や眼障りになる不二の山

越路から不二を見返せ帰る雁

吹きわける柳の風や不二筑波

青柳のしだれかゝるや不二の山

苗代やところところに不二のきれ

ふじよりも立つ陽炎や春の空

畑打やふじの裾野に人一人

薄紙のやうなふじあり桃の花

初秋の富士に雪なし和歌の嘘

秋風や片手に富士の川とめん

月高し窓より下に近江富士

雪の富士花の芳野もけふの月

朝霧の富士を尊とく見する哉

舞鶴の富士はなれけり秋の空

富士は曇り筑波は秋の彼岸哉

箱根路や薄に富士の六合目

霜月や雲もかゝらぬ晝の富士

此頃の富士大きなる寒さかな

森の上に富士見つけたる寒さかな

はつきりと富士の見えたる寒さ哉

寒けれど富士見る旅は羨まし

雪の無き富士見て寒し江戸の町

旭のさすや紅うかぶ霜の富士

帆まばらに富士高し朝の霜かすむ

朝霜の藁屋の上や富士の雪

木枯や富士をめかけて舟一つ

富士を出て箱根をつたふ時雨哉

積みあまる富士の雪降る都かな

大雪やあちらこちらに富士いくつ

富士ひとりめづらしからず雪の中

富士ひとりめづらしからず雪の朝

雪の富士五重の塔のさはりけり

赤いこと冬野の西の富士の山

冬籠り人富士石に向ひ坐す

庵の窓富士に開きて藥喰

富士山を箸にのせてや藥喰

富士へはつと散りかゝりけり磯千鳥

其奥に富士見ゆるなり冬木立

冬木立遙かに富士の見ゆる哉

冬枯や何山彼山富士の山

茶の花の中行く旅や左富士

明け易き夜頃や富士の鼠色

富士の影崩れて涼し冷し汁

秋近き窓のながめや小富士松

雪の間に小富士の風の薫りけり

炎天の中にほつちり富士の雪

不二垢離にゆふべの夢を洗ひけり

富士垢離は倶利迦羅紋の男哉

雲の峰いくつこえきて富士詣

ありあけの白帆を見たり富士詣

富士に寝て巨燵こひしき夜もあり

富士登る外国人の噂かな

雪くひに行くとて人の富士詣

富士行者白衣に雲の匂ひあり

見渡せば富士迄つゞく田植哉

初松魚生れ変らば富士の龍

日本橋や曙の富士初松魚

富士も見え塔も見えたる茂り哉

富士山は毎日見えつ初茄子

初空や烏は黒く富士白し
※烏でなく鳥という資料もある。

一の矢は富士を目かけて年始

西行の顏も見えけり富士の山

煩惱の梦の寐さめや富士の雪

富士の山雲より下の廣さかな

海晴れて小冨士に秋の日くれたり

見直せは冨士ひとり白し初月夜

冨士はまた暮れぬ内より高燈籠

小男鹿の冨士よちかゝる月よ哉

冨士隱す山のうらてや蕎麥の花

一家や冨士を見越の雁來紅

冨士ひとりいよいよ白き卯月哉

筆とつて冨士や画かん白重

冨士の雪見なからくふや夏氷

氷室守冨士をしらすと申しけり

初空や裾野も冨士と成りにけり

冨士といふ名に仰き見つつくり山

灘のくれ日本は冨士斗り也

冨士の根を眼當に昇る旭かな

秋たつやけふより不二は庵の物
※庵?俺?

朝寒の風が吹くなり雪の不二

秋晴て物見に近し秋の不二

名月や不二を目かけて鳥一羽

名月や不二をめくつて虫の聲

いざよひの闇とゞかずよ不二の山

破れ窓や霧吹き入るゝ不二颪

旅籠屋や霧晴て窓に不二近し

初嵐小不二ゆがんて見ゆる哉

吹き返す不二の裾野の野分哉

面白やどの橋からも秋の不二

身ふるひのつく程清し秋の不二

夕やけや星きらきらと秋の不二

秋不二や異人仰向く馬の上

山はにしき不二獨り雪の朝日かな

めづらしや始めて見たる月の不二

不二こえたくたびれ顔や隅田の雁

鴫黒く不二紫のゆふべ哉

桐一葉一葉やついに不二の山

不二一つおさえて高き銀杏哉

風拂ふ尾花か雲や不二の山

武蔵野の不二は尾花に紛れけり

蔓かれてへちまぶらりと不二の山

菊さくやきせ綿匂ふ不二の雪

蕣の不二を脊にして咲きにけり

大方はうち捨られつ師走不二

不二を背に筑波見下す小春哉

大極にものあり除夜の不二の山

寒けれど不二見て居るや阪の上

雲もなき不二見て寒し江戸の町

諏訪の海不二の影より氷りけり

薄赤う旭のあたりけり霜の不二

朝霜や江戸をはなれて空の不二

朝霜や不二を見に出る廊下口

凩や木立の奥の不二の山

空合や隅田の時雨不二の雪

薄暗し不二の裏行初しくれ

世の中の誠を不二に時雨けり

武藏野や夕日の筑波しくれ不二

汽車此夜不二足柄としぐれけり

初雪のはらりと降りし小不二

すじかへに不二の山から雪吹哉

裏不二の小さく見ゆる氷哉

達磨忌や混沌として時雨不二

不二のぞくすきまの風や冬籠

不二へ行く一筋道や冬木立

冬枯のうしろに高し不二の山

冬枯のうしろに立つや不二の山

はかなしや不二をかさして歸り花

茶の花や横に見て行朝の不二

とかくして不二かき出すや落は掻

十二層楼五層あたりに夏の不二

渾沌の中にものあり五月不二

短夜の上に日のさす不二の山

夏の夜や日暮れながらに明る不二

たそがれやながめなくして不二涼し

蟻一つ居ぬ下界と見えて不二涼し

夏不二の雪見て居れは風薫る

雲か山か不二かあらぬか五月雨

五月雨や天にひつゝく不二の山

不二山にくづれかゝるや雲の峯

夕立の又やふりけす不二の雪

夏の月不二は模様に似たりけり

不二垢離にゆふべの夢を洗ひけり

甲斐の雲駿河の雲や不二詣

飛び下りた夢も見る也不二詣

うたゝねの夢に攀ぢけり額の不二

紅の朝日すゞしや不二詣

月も日も夢の下なり不二詣

不二詣烏の鳴かぬ朝清し

不二詣水無月の雪に鰒もかな

短夜の限りを見たり不二詣

門を出て見ながら行や不二詣

雲置くや朝飯冷ゆる不二の室

団扇もて我に吹き送れ不二の風

夏痩の名にも立ちけり裸不二

不二見えて火の見櫓の涼み哉

見ぬ友や幾人涼む不二の陰

足伸へて不二をつゝくや涼み舟

不二は朝裾野は暗のともし哉

夏氷かむにあそこに不二の雪

我庵に不二を吐き出す蟇の口

時鳥不二の雪まだ六合目

一吹や羽蟻くづるゝ不二颪

卯の花に不二ゆりこぼす峠哉

遠不二の姿かりるや夏木立

ほのほのと茜の中や今朝の不二

元日や日も出ぬさきの不二の山

元日や鶴も飛ばざる不二の山

元朝や虚空暗く但不二許り

まだ夜なり西のはてには今朝の不二

けさの春琵琶湖緑に不二白し

まゝにならば宇治の若水不二の齒朶

一の矢は不二へそれけりゆみはしめ

初鴉不二か筑波かそれかあらぬ

あると見た色は空なり不二の雪

間違はし初めて不二を見てさへも

不二がねや雲絶えず起る八合目

肌寒やふじをまきこむ波の音

西行のふじにものいふ秋のくれ

秋晴てふじのうしろに入日哉

ふじ一つくれ殘りけり三日の月

ふじは雲露にあけ行く裾野哉

角力取の猪首はつらしふじの山

餘りうたば砧にくえんふじの雪

ふじ見えて物うき晝の花火哉

月見んとふじに近よる一日つゝ

粟の穂にふじはかくれて鶉啼く

いつしかにふじも暮けり夕紅葉

刈稻もふじも一つに日暮れけり

箱根來てふじに竝びし寒さ哉

ふじ山の横顏寒き別れかな

凩やちぎつてすつるふじの雪

面白やふじにとりつく幾時雨

初雪やふじの山よりたゞの山

白きもの又常盤なりふじの雪

母樣に見よとて晴れしふじの雪

冬の月一夜はふじにうせにけり

眞直にふじまでゆかん冬田哉

煤拂のほこりの中やふじの山

ふじのせた添水動かす枯尾花

蜘蛛の巣やふじ引かゝる五月晴

梅雨晴やかびにならずふじの雪

梅雨晴やふじひつかゝる蜘の網

夕立や雲もみださぬふじの山

松原に雪投げつけんふじ詣

卯の花にふじを結ひこむ垣根哉

元日や見直すふじの去年の雪

元日やふじ見る國はとことこぞ

ふじのねの矢先に霞む弓始

ふじのねや麓は三保の松飾り

餘の山は皆うつぶきつふじの山

灘の夕日本はふじ許り也

あし高は家にかくれてふじの山

雲いくへふじと裾野の遠きかな

秋風やつるりとしたる不盡の山

月と不盡一目一目のこよひ哉

三日月の悲しく消る不盡の山

見る内に不盡のはれけり朝の霧

見る内に不盡ははれけり朝の霧

右も三井左も三井秋の不盡

鶺鴒や飛び失ふて殘る不盡

不盡の山雪盛り上げし姿哉

吉原や眼にあまりたる雪の不盡

寒からん不盡の隣の一吹雪

不盡山をひねもすめくる吹雪哉

不盡の山白くて冬の月夜哉

西行の頭巾もめさず雪の不盡

不盡見ゆる北窓さして冬籠

不盡赤し筑波を見れは初日の出

秋のくれ見ゆる迄見るふしの山

扇見てふし思ひ出す夜寒哉

龍田姫ふしは女人の禁制そ

ふしの根に行あたりたる天の川

松折れてふしあらはなり初嵐

さりげなき野分の跡やふしの山

吹き付けてふしに消行野分哉

山山の錦きたなしふしの山

鵙なくやふしを見下す松のさき

鵲や橋杭になるふしの山

ふしの雪春ともしらぬ姿哉

はる風の吹きちゞめたりふしの雪

日本の花見下さんふしの山

ふしの影ふんて啼出す蛙哉

白梅やほつと朝日のふしの山

桃さくや紙のやうなるふしの山

日の本の桜にふしの夜明かな

梨子の花ふしは月夜に粉れけり

木枯やしかみ付たるふしの雲

時雨來る雲の上なりふしの雪

ふし見ゆる軒端をつゝる氷柱哉

冬の月一夜はふしの失にけり

冬枯の今をはれとやふしの山

茶の花や霜に明行ふしの山

熱い日は思ひ出だせよふしの山

ふしつくは都ふきこす青嵐

九合目へ来て気のせくやふし詣

空に入る身は軽げなりふし詣

松原へ雪投げつけんふし詣

ふしさへも一と夜に出来つ扇折

ふしか根の雪汁煮てや一夜酒

蝙蝠や薄墨にしむふしの山

並松へふし見に来たか閑古鳥

蚊柱やほつれほつれてふしの山

若竹や稍薄青きふしの山

元日やふしへものほる人心

目をやれば惠方にたてりふしの山

遣羽子の下にかすむやふしの山

いつそ皆子供にやれやふしの山

西行も笠ぬいで見るふしの山

日の本の俳諧見せふふしの山

天と地の支へ柱やふしの山


「筆まかせ」より「謎句」
左の二句を判じ給へ 尤(もっとも)後の方は非凡氏の立案にて余の句作なり
   埃及(えじぷと)が寒国ならば富士の山
   西形の顔も見えけりふじの山
此(この)後の句を解釈する人の説種〃あり 「富士の事を思へば連感にて西行の顔を見る如く思ふなり」「西行の顔がふじの雪に写るか 又は川にうつるものならん」「富士と西行の間へ我身をおけば可なり」などいふ説は皆あたらず


「筆まかせ」の「道中の佳景」から
併し此辺のけしきは(東京よりの下り列車ならば)右側をよしとす(尤(もっとも)自分も気車のむきに座するとして)、此他(このほか)ふじの見ゆる処は皆面白く 裾野をかけまわるも愉快なるが、尤其景色の絵画的(ピクチュアルスキュ)なるは興津、江尻近傍より後をふりむき、富士をながめたる時也 余は世界中斯(かく)の如き景はまたなきものと思ふ也


「筆まかせ」より
○三重まわる帯が二重もまわりかね
 一ッのものが二ッとぞなる
○化学者が水を分析してみれば
 一ッのものが二つとぞなる
○たいらなる富士のいたヾき近づけば
 一ッのものが三ッとなりけり

※盗花の名前(号)で書いてある
※九ッまである


わざとさへ見に行く旅をふじの雪

日本は霞んで富士も無かりけり

永き日に富士のふくれる思ひあり

梅雨晴や最う雲助の裸富士

※以上四句は、早稲田文学明治29年(1896)収録の子規子「俳句十二句」より。


「高尾紀行」
旅は二日道連は二人旅行道具は足二本ときめて十二月七日朝例の翁を本郷に訪ふて小春のうかれありきを促せば風邪の鼻すゝりながら俳道修行に出でん事本望なりとて共に新宿さしてぞ急ぎける。
  きぬ/″\に馬叱りたる寒さかな  鳴雪
暫くは汽車に膝栗毛を休め小春日のさしこむ窓に顏さしつけて富士の姿を眺めつゝ
  荻窪や野は枯れはてゝ牛の聲  鳴雪
  堀割の土崩れけり枯薄  同
  雪の脚寶永山へかゝりけり

2007年01月05日

前田慶次

すみの山の ひかしなるらし富士の雪

※上記は、「前田慶次道中日記」から

2006年11月27日

松江重頼(松江維舟)

武蔵野の外も山なし富士詣

一見も百物がたりや富士の雪

富士山は雪で貴き高嶺かな

2006年07月21日

町田しげき

笛のよく売れる祭よ津軽富士

2006年07月06日

松瀬青々

蒼茫に冨士をさがしつ明易き

2006年06月22日

前田普羅

慈雨晴れて色濃き富士へ導者かな

苗床やびようびようと鳴る富士颪

濛雨晴れて色濃き富士の道者かな

2006年06月21日

前川伊太郎

水澄むや湖に裾ひく逆さ富士

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2006年05月21日

松本たかし

星空に居る大富士や除夜の駅

山山を統べて富士在る良夜かな

大富士の現れゐるや望(もち)の宿

初富士の抱擁したる小漁村

夕まで初富士のある籬かな

2006年05月17日

松村蒼石

小春富士ひと日かがやく兵と父に

松村幸一

いきなりや顔いつぱいに春の富士

松岡潔

エンデバー春雪の富士掠めけり

2006年05月15日

松浦其国

初富士や瑞山は未だ明けきらず

2006年05月14日

松澤昭

凩に富嶽百景抛りだす

富嶽冠雪へなへなと坐るなよ

2006年04月29日

三田逃水

臘梅や不二にも重き空の青

2006年04月07日

黛まどか

富士山を入れて撮れよとサングラス

前田六霞

夕立去る富士の笠曇おきざりに

2006年04月06日

前田野生子

朝富士夕富士よ避暑たのしくて

2006年04月05日

松浦武四郎

「丁亥前記」
登岳も屈指五十一年、余未だ十九歳のときなりしが、吉田を上り、須走に下り、表口のほうを相らざりしかば、俗間に、北より上り南表口に下り、南より登り北に下るを、山を撃えざくとて忌むとは知れど・・・

松本十三女

雪解富士滝ごうごうと響かする

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松尾隆信

胸ぐらに迫る雪富士誕生日

2006年04月03日

松橋利雄

夕富士や粽櫚剥ぐころの空の澄み

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松永鬼子坊

まざまざと影富士見るや富士詣

松崎郁子

月の無き真夜の黒富士月見草

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2006年03月18日

北村ゆうじ

松山へ飛ぶ富士の上の小春かな

2006年03月12日

松岡青蘿

不二は白雲桜に駒の歩みかな

益田清

湾に浮く朝の黒富士敗戦忌

2006年02月25日

松濤明

「山想う心」
華麗、陰惨、明快、幽邃(ゆうすい)、重厚、深遠、平和、兇猛……、山の美は選ぶ人の心により各様である。或る人は富士を佳い山といい、或る人は穂高ほど素晴らしい山はないと言う。高尾山など頼まれても嫌だと言う人もあれば、そのふくよかな谷間をこよなく愛する人もある。しかし、それぞれ評価のすべてを貫いて流れるものは美への好尚であり、押しなべて山想う心である。

2006年02月24日

まど・みちお

「一年生になったら」から抜粋

一年生になったら
一年生になったら
ともだち100人 できるかな
100人で 食べたいな
富士山の上で おにぎりを
パックン パックン パックンと

※まど・みちお作詞・山本直純作曲

2006年02月17日

松浦静山

お富士さん 霞の衣 ぬぎなんし
  雪のはだへを 見たうおざんす

松浦静山

2006年02月02日

増田雅子(増田まさ子、→茅野雅子)

「恋衣」に収録(詩:山川登美子、増田雅子、與謝野晶子)
 「みをつくし」より
ゆく春をひとりしづけき思かな花の木間に淡き富士見ゆ