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2006年04月22日

幸喜美恵子

都庁舎へ富士の初雪見にのぼる

向山隆峰

泥舟に富士の筆太飾米

紅林震

鼻先の脚にあんじん富士詣

※この方の読み方を教えて下さい!

古川芋蔓

雨雲にかくるゝ富士や南瓜蒔く

甲賀山村

湖へだつ不二真向にささげ干す

原コウ子

尿する野路の童に夏の富士

原柯城

初富士は裾曲ぼかしに伊豆の浦

短夜の月に肩濡れ利尻富士

五島高資

気をつけをして立つ父と 夏の富士

壺焼や富士に雨雲近づける

気をつけをして立つ父と夏の富士

五島高資について

溝俣炬火

纏ひゆく三保の松影富士雪解

江里昭彦

富士はいつも富士削りとる風のなか

清水義範

「日本文学全集第一集」の「小倉百人一首」から
「親父(おやじ)富士」  呑度鈍(どんどどん)・歌
○田子のヨー 田子のヨー
 おれが育った田子の浦にはヨー
 あとにひかえた親父の富士がある
 雪をいただく偉大(おおき)な姿が
 いつもおれを見守っている
 おれはヨー 心のなかで親父の 親父の富士をヨー
 いつも頼りにしているんだヨー

2006年04月21日

明空

「宴曲抄」より
望月の駒牽(ひき)かくる布引の
山の違(そがひ)に見ゆるは 
海野白鳥(しろとり)飛鳥(とぶとり)の 
飛鳥(あすか)の川にあらねども 
岩下かはる落合や 
淵は瀬になるたぐひならん 
富士の根の姿に似たるか塩尻
赤池坂木柏崎 
同(おなじ)雲居の月なれど 
何の里もかくばかり

※早歌?

五島エミ

白富士を輪投げの的に裾野の子

2006年04月20日

斯波園女

雪に思へ富士に向はば故郷の絵

霜やけを不二の光にこころ儘

しら糸に霜かく杖や橋の不二

不二見えてさるほどに寒き木間かな

※霜やけ「も」不二の光に心まま?

後深草院二条

「とはずがたり」
煙もいまは、絶え果てて見えねば 風にもなにかなびくべくとおぼゆ。

富士の嶺は恋を駿河の山なれば思ひありとぞ煙立つらん

杯すゑたる小折敷(をしき)に、書きてさしおこせたる、
   思ひ立つ心は何のいろぞとも富士の煙の末ぞゆかしき
いと思はずに、情ある心地して、
   富士のねは恋をするがの山なれば思ひありとぞ煙立つらん
馴れぬる名残は、これまでもひき捨てがたき心地しながら、さのみあるべきならねば、また立ち出でぬ。

金田清光

富士行者杖の日の丸古りにけり

金子麒麟草

寒夕焼遠富士の上の一つ星

金子潮

不二初雪蚕を終へし窓開かれて

2006年04月19日

阿仏尼

「うたたねの記」
不二の山は、ただここもとにぞ見ゆる。けぶり雪いと白くてこころぽそし。風になびく煙の末も夢の前に哀れなれど、上なきものはと思ひ消つこころのたけぞ、ものおそろしかりける。甲斐の白根もいと白く見渡たされたり。


「十六夜日記」
富士の山を見れば煙もたゝず。むかし父の朝臣にさそはれて、「いかになるみの浦なれば」などよみしころ、とほつあふみの國まては見しかば、「富士のけぶりの末も、あさゆふたしかに見えしものを、いつの年よりか絶えし」と問へば、さだかにこたふる人だになし。
「たが方に なびきはてゝか 富士のねの 煙のすゑの 見えずなるらむ」。
古今の序のことばまで思ひ出でられて、
「いつの世の ふもとの塵か 富士のねを 雪さへたかき 山となしけむ。
 くちはてし ながらの橋を つくらばや 富士の煙も たゝずなりなば」。
今宵は、波の上といふ所にやどりて、あれたる昔、更に目もあはず。
廿七日、明はなれて、後富士川わたる。朝川いとさむし。かぞふれば十五瀬をぞ渡りぬる。
「さえわびぬ 雪よりおろす 富士川の かは風こほる ふゆのころも手」。
けふは、日いとうらゝかにて、田子の浦にうち出づ。あまどものいさりするを見ても、
「心から おりたつ田子の あまごろも ほさぬうらみと 人にかたるな」
とぞ言はまほしき。

「立ち別れ 富士のけぶりを 見てもなほ 心ぼそさの いかにそひけむ」。
又これも返しをかきつく、
「かりそめに 立ちわかれても 子を思ふ おもひを富士の 煙とぞ見し」。

桂樟蹊子

富士晴れて代田へ分つ映り水

黄菅群れ淡くて富士の沈みがちに

熊田鹿石

鴨の群下り来て乱すさかさ富士

※この方の情報を教えて下さい!

轡田進

林泉は富士の伏流榛咲ける

繍線菊や富士を纏く道やはらかし

鍵和田ゆう子

遠富士に雲の天蓋雛祭

富士隠す冬山ひとつ東歌

初荷幟の白さを競ひ富士ある町

茎立や富士ほそるほど風荒れて

※(ゆう=禾+由)

原裕

てのひらに富士を乗せたる秋の暮

2006年04月18日

玉澤淑子

一人来て二人三人雪解富士

宮原勉

雪の野の上に見えつつ富士ヶ嶺はくろずむ雲とともに黒ずむ

金子兜太

富士を去る日焼けし腕の時計澄み

妻に鶏卵われに秋富士の一と盛り

富士たらたら流れるよ月白にめりこむよ

破戒僧忽然と現る富士忘れいしに

「すべて腐爛(くさ)らないものはない」朝涼の富士

朝がきて蜻蛉いっせいに富士突き刺す

猪走る朝富士褐色の腐り

富士見えぬ真昼銀漢も地に埋まり

富士黒く露にまみれて嘔吐の熊

五月富士妻癒えたれば野路に親し

京極杞陽

早子いふ秋晴の不二よかりしと

京極杜藻

一鳥啼かず富士初雪のきびしさに

2006年04月17日

葛原繁

富士の秀(ほ)を吹き越ゆる雲冬空の
   真洞(まほら)に流れ止むときもなし

※葛原繁氏(歌人)は葛原しげる氏(童謡詩人)と異なるようだ。

宮下翠舟

奔放に雲をぬぎすて葉月富士

星ぞらに下田富士あり梅匂ふ

邯鄲の闇もて富士を塗りつぶす

及川貞

富士のみはくろし秋晴くづれずに

久保田泉

鮠釣の正面晴るる近江富士

久保田重之

寒夕焼富士一日の力抜く

2006年04月16日

吉野義子

二日富士あたらしき雪重ね被て

宙に浮く富士の痩身枯月夜

大年の宙にあひあふ月と富士

除夜零時星二つ連れ月の富士

月光の富士をたまひて村眠る

初晴や凍湖平らに富士に侍す

町の路地富士へひらけてさくらの芽

暁の富士瓜刻む音藁屋より

富士を截る一枝平らに朝桜

夕桜一樹もて富士覆ひけり

さくら一枝くぐりて富士へ一歩寄る

一片の雲をゆるさず花と富士

碧天に雪富士いまだ湖覚めず

有働亨

梟に白装束の夜の富士

大沢崩れ御山洗の雲深し

慈悲心鳥岩壁富士に対したり

富士の山体そのものには川の名に値する川はなく、山体に降る雨は山体に浸み込み、十数年を経て地表に湧出すといふ。 「富士伏流水」と呼ぶ。白糸の瀧亦然り。
   色鳥や富士伏流水瀧と展く

海道記

富士の山を見れば、都にて空に聞きししるしに、半天にかかりて群山に越へたり。峰は烏路(ちょうじ)たり、麓は蹊(けい)たり、人跡、歩に絶へて独りそびえあがる。雪は頭巾に似たり、頂に覆ひて白し。雲は腹帯の如し、腰にめぐりて長し。高きことは天に階(きざはし)たてたり、登る者はかへつて下る。長きことは麓に日を経たり、過ぐる者は山を負ひて行く。温泉、頂に沸して細煙(さいえん)かすかに立ち、冷池、腹にこたへて洪流(こうりゅう)をなす。

川柳1

大変なことは孝霊五年なり

孝霊五年あれを見ろあれを見ろ

孝霊五仰むくものに覗くもの

ヤレ起きろ山が出来たと騒ぐなり

明くる朝不思議に思う波の音

湖になったで山があがるなり

サァサァ江州と駿州の次第

富士の絵図諸国で売れる孝霊五

絵に写しこの山昨夜と奏聞し

寝耳に水の奏聞を近江する

奏聞に近江が済むと駿河出る

二度の奏聞寝耳へ水の音

富士山は下手が書いても富士と見え

山の図に扇を開き奏聞し

孝霊に近江の年貢皆無なり

二ヶ国の貢は許す孝霊五

孝霊の前は名のなき明日見村

孝霊五無精でなくばすぐ見村

三国一の無精者明日見よう

仰向いて嘘だ嘘だと明日見村

惜しい事末代見えぬ明日見村

鹿を追う猟師のような明日見村

実語教富士と布袋をそしるよう

相撲取り子には教えぬ実語教

富士を見ぬ奴が作りし実語教

実語教孝霊五より前の作

実語教孝霊前の作ならん

目出度さは此の上もなき富士の夢

心地良さ夜舟で春の富士を見る

有り難さ枕を高く富士の夢

日本の夢は一夜に湧いて出る

孝霊の以前は美女も丸顔

富士山を額に書いたいい女

美しさ富士の麓は柳なり

美しい富士三日月が二ッ出る

湯上がりの富士の額に煙り立つ

和らかな国にむっくり芙蓉峯

近江から一夜に咲いた芙蓉峯

時知らぬ娘は何時も二十なり

お富士様幾つ十三七ツなり

業平に二十くらいと姫見られ

同い年何時でも若い月と富士

十三七ツ未だ年は若い富士

面影も変わらず今に二十なり

不老不死保って今に二十山

面影の変わらで年の二十山

なま長い御名は此花開耶姫

本名は開耶姫にて御富士様

開耶姫俗名御富士様といい

開耶姫三国一の富士額

開耶姫夏珍しき薄化粧

秋風に白粉をする開耶姫

げっそりと夏やせをする開耶姫

一合の事で天まで届きかね

平地だと榎を九本植えるとこ

天と地の間を九里余も登るなり

時知らぬ山を尋ねて徐福来る

表舵にに富士へ引き向け徐福乗る

琵琶よりも富士は異国へ響くなり

大きな湖水山のつん抜けた跡

抜けがらも三国一の水たまり

跡は野と成らず大きな湖となり

近江者うぬがのように富士をいい

竹生島だけが一合不足なり

駿河へは九引きて近江一残り

富士島と言うべきとこを竹生島

三国の二を宝永に産み落し

宝永の頃降りものが壱つ増え

年寄りが寄ると話に砂が降り

新造に砂の降ったる物語り

山一つ十文銭とおない年

此の山で銭を鋳たかと道者聞き

町々の西をば富士でおっぷさぎ

快晴さ富士の裾野に江戸の町

日本一を二つ見る日本橋

越後屋の春正面に富士を見せ

大きな見世のひあわいで富士が見え

角川源義

火の祭富士の夜空をこがしけり

黄鶲に焦土のごとく富士くだる

富士近き街に目覚めぬ百日紅

繍線菊(しもつけ)の道とほどほし富士の前

海遠く富士に雪来と楮蒸す

のぼり来て冨士失ひぬ花胡桃

富士近き街に目覚めぬ百日紅

久米三汀(久米正雄)

雲四散して初富士の夕眺め

茶の花に富士の雪翳青きかな

茜富士かな/\杉に収まりぬ

秋かやを出て赤富士を目のあたり

硝子絵のよな初富士の浮く浦輪

薄雲の中に初富士ありにけり

泳ぎ出でゝ日本遠し不二の山

武田泰淳

「富士」
 「富士が燃えているよ」
彼は、たしかに、そう言ったと思う。いや、私がたじろぐほど、しっかりした眼つきで私を見つめ、まちがいなく私に向かって、少年はそう言ったのだ。宣告したのだ。「富士が燃えているよ」 それは、風に吹きさらされる大煙突のてっぺんから、はるか彼方に赤く燃えさかる富士の実景を、彼の肉眼で、しっかり見てとったという意味だったろうか。それとも、視力にたよらぬ悪意ある暗示だったのだろうか。

吉田冬葉

野に遊び真白なる富士に驚きぬ

吉村あい子

暗闇に故里訛富士詣

吉川春藻

夜の不二と夜鷹の声と澄みまさり

吉岡富士洞

初飛行卒然と富士指呼にあり

吉井竹志

牧牛の群る高原や皐月富士

岩下ただを

雁渡し富士を遠見に父母の墓

※この方の情報を教えて下さい!

岩間民子

目刺青し富士麓までよく見える

岩間民子

目刺青し富士麓までよく見える

岩淵晃三

ひと刷けの土牛の富士の淑気かな

亀井糸游(亀井絲游)

夜は富士の闇のかぶさる冬構

岩松草泊

野は夕焼富士晴れてゆく晴れてゆく

橋本榮治

富士夏嶺谺雄々しく育ちをり

銀河懸け富士に流るる登山の灯

橋本夢道

昇り蝶大群青の富士初夏

元日や山容無類不老富士

軍隊なき夏富士を見てありがたし

橋本多佳子

胸先に黒き富士立つ秋の暮