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後深草院二条

「とはずがたり」
煙もいまは、絶え果てて見えねば 風にもなにかなびくべくとおぼゆ。

富士の嶺は恋を駿河の山なれば思ひありとぞ煙立つらん

杯すゑたる小折敷(をしき)に、書きてさしおこせたる、
   思ひ立つ心は何のいろぞとも富士の煙の末ぞゆかしき
いと思はずに、情ある心地して、
   富士のねは恋をするがの山なれば思ひありとぞ煙立つらん
馴れぬる名残は、これまでもひき捨てがたき心地しながら、さのみあるべきならねば、また立ち出でぬ。