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竹取物語

※古谷知新 校訂版

   あふことも涙にうかぶわが身にはしなぬくすりも何にかはせむ
かの奉る不死の藥の壺に、御文具して御使に賜はす。勅使には調岩笠(つきのいはかさ)といふ人を召して、駿河の國にあンなる山の巓(いたゞき)にもて行くべきよし仰せ給ふ。峰にてすべきやう教へさせたもふ。御文・不死の藥の壺ならべて、火をつけてもやすべきよし仰せ給ふ。そのよし承りて、兵士(つはもの)どもあまた具して山へ登りけるよりなん、その山をふじの山とは名づけゝる。その煙いまだ雲の中へたち昇るとぞいひ傳へたる。