高楠順次郎
「富士民謡」
○富士の白雪 朝日でとける
とけて流れて 三島に落ちて
三島乙女の 化粧の水
○富士に立つ影 乙女の踊り
右に金時 左に長尾
八重山霞の裾模様
○箱根まゐりに 千軒詣で
富士の裾野に 見る初夢は
一富士二鷹 三なすび
○高い山から 谷底見れば
谷は春ゆき 早や夏半ば
瓜やなすびの 花盛り
○富士の牧狩り 歌舞伎の澤は
飯盛り水仕に その身をやつす
歌舞の菩薩の 晴れの場所。
○玉穂の陣屋は 夜もふけ渡り
怪しき灯影 忍び緒しめて
曽我兄弟は 跳り足
○怨み果たして 身は花と散る
散りゆく花を 傍に見て
虎や少將は 血の涙
※高楠順次郎作詞/弘田龍太郎作曲
※昭和2年