榎本其角(宝井其角)
白雲の西に行方や普賢富士
無い山の富士に並ぶや秋の昏
富士に入日を空蝉やけふの月
白雪にくろき若衆や冨士まうで
霞消て富士をはだかに雪肥たり
富士の雪蠅は酒屋に残りけり
「芭蕉翁終焉記」
天和三年の冬、深川の草庵急火にかこまれ、潮にひたり、苫をかつぎて、のびけん。
是ぞ玉の緒のはかなき初め也。爰に猶如火宅の変を悟り、無所住の心を発して、其次の年、夏の半に甲斐が根にくらして、富士の雪のみつれなかればと。それより三更月下入無我といひけん。昔の跡に立帰りおはしければ、