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近藤真琴

「澳行日記」
四日朝右舷のかたに遠山雪の如く見ゆ。これアラビヤのフラテオーなるべし。正午にはアーデンの山々手に取るごとく見ゆ。三時に船は港に入りぬ。このところは山みな巌石にして火山の如く、富士のいたゞきのごとくにぞありける。さればたえて草木なく、いささかの流れだになければ水に乏しく、家ごとに平らかなる屋根を作り、ふる雨をうけとめてもらさじとすめり。港には蒸溜機械を具へたる船ありて、日毎に怠らず海水を蒸溜して真水とせり。