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中村草田男

寒富士や俳句の行衛国の行衛

富士現れてハンケチさへも秋の影

秋富士の彼方に病友文を待つ

雲海の彼岸の富士や今日あけつゝ

雪の富士落暉紅さと円さの極

暮の富士歌の茂吉に会ひに行く

白馬の眼繞る癇派雪の富士

初富士や鷹二羽比肩しつつ舞ふ

揚羽遂に潮路に墜ちぬ不二の前

富士秋天墓は小さく死は易し

初冨士銀冠その蒼身は空へ融け

秋富士は朝(あした)父夕(ゆふべ)母の如し

寒富士は空を広めて緊く細く

諸山は遠富士に添ひ朝焼くる