高島九峯(高島張輔)
「鎌倉望嶽歌。用坡公登州海市詩韻。」
※鎌倉にて嶽を望む歌。坡公が登州海市詩の韻を用う。
芙蓉八朶撐青空
變幻出沒煙雲中
直立一萬五千尺
登此可以窺天宮
維嶽涌出在上世
削成巉巌神斧功
太湖萬頃一時闢
九霄飛躍深淵龍
我會欲到帝之側
神悸一笑昌黎翁
豈意老天弄狡獪
猜防卻借滕六雄
壬申秋。東游登嶽。比及半腹。天俄雪。竟不窮絶頂而下。
今日養痾碧湘上
憑檻望嶽雙眸窮
玉容儼然隔海立
彩暉映發霞光融
壮時意氣果何在
酒量涓滴空千鍾
新詞寧能致神感
自慙腹笥終不豐
但餘鬢色與嶽爭
皤皤相照臨鏡銅
何當騫翥借鵬翼
直攀絶頂凌長風
※芙蓉 八朶 青空を撐(ささ)え
※變幻 出沒す 煙雲の中(うち)
※直立 一萬五千尺
※此(ここ)に登れば以て天宮を窺(うかが)う可し
※維(これ)嶽涌出するは上世に在り
※削成 巉巌(さんがん) 神斧功(しんぶこう)
※太湖 萬頃 一時に闢(ひら)き
※九霄(きゅうしょう) 飛躍す 深淵の龍
※我會(かつ)て帝の側に到らんと欲し
※神悸(しんき)一笑す 昌黎翁(しょうれいおう)
※豈(あに)意(おも)わんや 老天 狡獪(こうかい)を弄し
※猜防(さいぼう) 卻(かえ)って借る 滕六(とうりく)の雄
※壬申の秋。東游して嶽に登る。半腹に及ぶ比。天俄に雪ふる。竟に絶頂を窮めずして下る。
※今日 痾(あ)を養う 碧湘の上(ほとり)
※檻に憑(よ)り嶽を望み 雙眸(そうぼう)窮まる
※玉容 儼然 海を隔てて立ち
※彩暉(さいき) 映發し 霞光 融(と)く
※壮時の意氣 果して何(いずく)にか在る
※酒量 涓滴(けんてき) 千鍾空(むな)し
※新詞 寧(いずく)んぞ能く神感を致さん
※自(みずか)ら慙(は)ず 腹笥の終(つい)に豐ならざるを
※但(ただ)餘す 鬢色(びんしょく)の嶽と爭い
※皤皤(はは) 相照らし鏡銅に臨むを
※何(いつ)か當(まさ)に騫翥(けんしょ) 鵬翼を借り
※直ちに絶頂に攀(よ)じ長風を凌ぐべし