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ウォルトン(マリー・ウォルトン、W. H. M. Walton)

「御岳より乗鞍まで」
前日の我々の困苦は次の日の日出の光景を以て十二分に償はれたのである。余は廔々日本の緒の山(勿論富士を含む)で「ご来光」を見たが乗鞍の絶景に比すべきものはない。萬籟寂として声なく、眼下は白雲層々として大海原の観を呈し東方の一角太陽未だ浮ばずして僅に金色を漂はし、北方には笠、立山、槍、穂高の諸岳が一群の黒き島となって現はれ、東の方には南アルプス、駒、北又は間、塩見、東、荒川、赤石、聖等、余の曽遊の山々が其雄姿を浮かべ、富士は群峯の後ろからこちらを覗いて居る。

※「山岳」第二十二年第三号(昭和3年)より
※大正10年に富士登山