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滝沢馬琴(曲亭馬琴)

「南総里見八犬伝」(南總里見八犬傳)
仰ぎて西南を眺れば 夏の富士いまだ装を更めず。遥に東北を省れば 翠の筑波 尚霞を残せり。武総両国の都会にあなれば 海舶多く錨を卸し 商漁那這に軒を比べて 世渡り易き福地になんありける。然ば又這河辺に 三観鼻と喚做す出崎あり。什麼何等の由来にて 這名あるやと原るに 看官知らざる所あり。約莫這水際に 翹て観るときは 右は富士 左は筑波 前面は葛西の曠野まで 杳渺として障るものなく 只一覧にて 三箇の眺望あり。因て土人字して 三観鼻と唱へたり。