明治天皇
明治十一年以前 述懐
をぐるまのをす巻きあげてみわたせば朝日に匂ふ富士の白雪
明治十七年 晴天鶴
富士のねもはるかに見えてあしたづのたちまふ空ぞのどけかりける
明治二十九年 山霞
あま雲もいゆきははゞかる富士のねをおほふは春の霞なりけり
明治三十五年 薄暮山
あかねさす夕日のかげは入りはてゝ空にのこれる富士のとほ山
明治三十八年 新年山
富士のねに匂ふ朝日も霞むまで年たつ空ののどかなるかな
明治四十一年 富士山
万代の国のしづめと大空にあふぐは富士のたかねなりけり
明治四十三年 海辺雪
波のうへに富士のね見えて呉竹のはやまの浦の雪はれにけり
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・ 以上、大正十一年九月にまとめられた明治天皇御集から「富士」を含む歌。
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