昭憲皇太后(明治天皇の皇后)
二十七年 新年山
新しき年の初日に富士の根の雪さへにほふ朝ぼらけかな
二十七年 海上夕立
富士の根は雲にかくれてくらざはの沖ゆく船にかゝる夕立
四十年 折にふれて
大君のみいつおぼえて日かげさす劔が峯の雪ぞかゞやく
三十七年 眺望
三浦がた富士の高根のみえぬ日も江の島のみはさやけかりけり
四十二年 湖上舟
玉くしげ箱根のうみをゆく船にうつれる富士の影うごくなり
三十八年
あしたづのは山の里にうちむかふ富士より高き齢かさねよ
三十年 西京にものしける時御殿場あたりにて
見ゆべくも思はざりしを富士の根の雲間さやかにあらはれにけり
四十年 田子の浦にゆきしをり
道すがら心にかけし雲はれて雪さやかなる富士を見るかな