大和田建樹
「鉄道唱歌」(東海道篇)より
14(御殿場・佐野)
はるかにみえし富士の嶺は
はや我そばに来(きた)りたり
ゆきの冠(かんむり)雲の帯
いつもけだかき姿にて
15
ここぞ御殿場夏ならば
われも登山をこころみん
高さは一万数千尺(すせんじゃく)
十三州もただ一目
18
鳥の羽音におどろきし
平家の話は昔にて
今は汽車ゆく富士川を
下るは身延の帰り舟
20
三保の松原田子の浦
さかさにうつる富士の嶺を
波にながむる舟人は
夏も冬とや思うらん
29(鷲津・二川)
右は入海(いりうみ)しずかにて
空には富士の雪しろし
左は遠州洋(なだ)近く
山なす波ぞ砕けちる
「鉄道唱歌」(第5集=関西・参宮・南海各線)より
28
伊勢と志摩とにまたがりて
雲井に立てる朝熊山(あさまやま)
のぼれば冨士の高嶺まで
語り答うるばかりにて
※大和田建樹作詞・多梅稚(おおのうめわか)作曲
※歌詞は変遷がある。