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平治物語

「平治物語」
かくて近江の国をもすぎゆけば、いかになるみの塩ひがた、二むら山・宮路山・高師山・濱名の橋をうちわたり、さやの中山・うつの山をもみてゆけば、都にて名にのみきゝし物をと、それに心をなぐさめて、富士の高根をうちながめ、足柄山をも越ぬれば、いづくかぎりともしらぬ武蔵野や、ほりかねの井も尋みてゆけば、下野の国府につきて、我すむべか(ん)なる室の八嶋とて見やり給へば、けぶり心ぼそくのぼりて、おりから感涙留めがたく思はれしかば、なくなくかうぞきこえける。

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