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僧契冲

富士がねは山の君にて高御座
   空にかけたる雪の経笠

そらにみつやまとしまねにふたつなき
   たよりとなれるふじのしば山

日のもとのくにをしづめてうごきなき
   ふじのたかねのなるさはのいし

くちなしのゆきげの雲は空とぢて
   人ぞいひつぐふじのたかね

ふじのねに峰をわたりてふる雪の
   めづらしげなくめづらしきかな

あづまぢはをちこち人のいひづきて
   ゆくもかへるもふじのしばやま

ひさかたのあまのみはしら神代より
   たてるやいづこふじのしば山

富士のねをみれば雲にものらぬみの
   こゝろは空にうきしまがはら

をとめこがふじのみゆきのしたがさね
   あまのはごろもなるゝよもなし